【米国雇用統計】2024年9月 米国労働市場の詳細確認

今回の雇用統計では、非農業部門雇用者数、失業率、平均時給いずれも市場予想よりも強く非常に良いないようの雇用統計となった。
8月分の非農業部門雇用者数、平均時給も上方修正されている。

この結果だけでは、利下げサイクルをひっくり返すことはないが、そのペースを鈍化させる要因にはなるだろう。
また、実質賃金の改善が続くことが示唆されたものと考えることができ、米国経済にとっては明るい内容である。

失業率と就業者比率

失業率は7月に4.3%まで上昇したが、9月には4.1%まで低下した。
これは就業者比率(E/P Ratio)を見てもわかるように、労働参加率の低下によるものではなく、純粋な労働市場の改善である。

高齢化などを考慮すれば、自然失業率は4.5%付近と思われるが、それを超えるようなトレンドになるのではないかと不安に思っていたが、杞憂だった。(少なくとも思っていたより悪化は遅い)

この底堅い労働市場の状況を鑑みれば、FRBの利下げペースは鈍化するか、もしFRBの早い利下げペースをするのであれば、インフレの再燃のリスクを意識する必要があるかもしれない。

失業理由の詳細

引き続き、失業理由では、明確な手がかりはない。
それぞれの失業理由に明確なトレンド形成・判定の兆しは見られない。

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)

週給・時給とその他関連データ

時給の伸びが少し回復したものの、賃金の上昇率鈍化傾向は変わったとは言い難い。
名目賃金上昇に起因するインフレ(wage push inflation)の加速は起こるとは考えにくい状況である。あくまでも”物価の上昇が想定よりも遅い可能性を否定し得ない”ことを示唆した程度であろう。

また、平均週間労働時間は依然として弱い状況が続いている。
民間の労働時間はコロナ後最低水準まで減少している。

これは、既存労働者の労働時間の減少、雇用者数の減少、レイオフという一連の労働市場の悪化を示す教科書通りの流れが起こっていることを示唆している可能性があることは以前から指摘している通りである。

一方で、実質週給及び実質時給の伸び率はプラス圏での推移が続いており、物価高に苦しんでいた2年前とは状況が変わっている。(これらのデータは2024年8月分まで)

前述の通り、インフレの鈍化と底堅い労働市場とを考えれば、実質週給・時給の伸び率がプラス圏で推移し続けることが考えられ、米国経済にとっては素直にプラスである。

以上の結果を踏まえれば、今回の米・雇用統計の内容は素直にプラスと取って良いと思われる。
また、中東の緊張の高まり、トランプの再来リスク(関税と物価高要因という意味でのリスク)を考えれば、物価・金利低下ペースが遅まる要因が複数みられる。

大きな傾向が変わらないであろうことから、引き続き米国債券ETFのホールドは続けつつも、中長期債ETFの購入に積極的に動くことは待っておこう。

しかし、来たる時のためにも円高タイミングでは米ドルを積むことを忘れないようにしたい。