各国の物価目標と現状
- 2021.07.24
- 経済・マーケット
最近の為替、株式市場は専ら各国のテーパリングの時期ばかりを気にして動いている。
そこで各国の物価目標と現在のインフレ率から、各国の中央銀行がどれだけテーパリングへと近づけているのかを考えてみる。
主要先進国中央銀行の物価目標
- 米国:2%(Flexible average inflation targeting)
- EU:2%前後
- 日本:2%
- 英国:2%
- 豪州:2~3%
- NZ:1~3%
- カナダ:1~3%
上記の通り一番強いインフレ目標を持つのが豪州。
又、米国は2020年8月に物価目標(と雇用の目標)に関するスタンス変更を行い、それによって労働市場の改善・完全雇用をより重視し、完全雇用達成前にインフレ率が2%を超えたとしても、すぐには利上げには転じない方針を示した。
今まで、インフレ率が2%へ向かうことが確認できた場合や2%を超えた場合には利上げを行っていたが、今後はある一定期間(具体的には定義されていない)の平均が2%になるようにフレキシブルに政策金利の決定を行うようである。
(セントルイス連銀の参考記事)
EUに関しても、2021年7月に物価目標を”below but close to 2%”から”symmetric 2%”へと変更した。
(”2%以下だが2%に近い水準”から”2%前後”へと変更)
これももちろん強気の変更であり、ECBのテーパリング・利上げが更に遠のいたと考えられている。
各国のインフレ率の現状
全て前年比の数字をみていきます。直近の前年比インフレ率は基準点(ベース)がコロナ禍で大きな影響を受けたタイミングであるため、高い数字になる傾向にある。
そのため、インフレ率に基づいてテーパリング・利上げ期待があるかを判断する場合、現在のインフレ率は各国(各国中央銀行)の目標インフレ率を大きく超えている必要があるものと思われる。
米国
FRBが一番重要視しているのは、core PCE Deflatorですが、目標の2%は大きく超える結果となっている。
サプライチェーンの問題などから一時的なものとの話もあるが、若干下がったところで目標を超える水準が当面は続くと思われる。
Data Source : U.S. BEA retrieved from FRED
Euro Area
米国とは異なりEuro Areaのcore HICPは2%を大きく下回る結果となっている。
HICP総合でみても2%にとどかずにおり、インフレ率はまだまだ弱いものとなっている。
最近の物価目標の若干の変更もあり、やはりECBの利上げは遠い話といえる。
Data Source : Eurostat
日本
コメントするまでもないが、日銀の利上げは当面考えられないだろう。
2%の物価目標などコロナ禍前から達成できておらず、金融緩和以外の何かが必要なのだろう(構造改革?)
Data Source : 総務省統計局
イギリス
2%は超えてきているが、EU離脱やイギリス・欧州のコロナ感染状況など考慮しなければならない材料が多くある複雑な状況の中で、需要増を理由とした物価上昇が作り出されるのかは疑問が残る。
Data Source : Office for National Statistics
オーストラリア
オーストラリアに関してもコロナ禍前から物価目標を達成できておらず、コロナからの回復がみられたとしても米国やNZなどに比べれば利上げは遅くなるものと考えていいのではないだろうか。
RBAは刈込平均CPIを重視しています(下のチャートではCPI trim)
Data Source : Australia Bureau of Statistics
ニュージーランド
RBNZの物価目標の1~3%の上限3%も超えており、今後は若干水準が下がるにしても目標レンジないでの推移は期待できるだろうから、政策金利の引き上げ条件は整いつつあるといえるだろう。
Data Source : Stats NZ
カナダ
NZと同じく、カナダも物価目標の1~3%の中央値2%はもちろんのこと、上限の3%も超えるインフレ率となっている。
また、そもそもの目標が1%~であることもあり、十分なインフレ率を達成しているといえよう。
Data Source : Statistics Canada
各国テーパリング・ペースについて
今まで見てきた通り、物価目標の観点からいえば、金融緩和縮小・利上げに舵をきれそうなのは、米国、NZ、カナダといったところだろう。(カナダ、NZに関してはすでに縮小してきているが)
この物価状況や、コロナ感染者状況など不安要因も大きく残っていることを考えると、リスクに備える、テーパリングへの期待にベットすることができるUSDが引き続き魅力的にみえる。
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