2022年4月 先行指標からの経済現状確認

10年債2年債の逆イールドなど市場でいくつかの先行指標が怪しい動きをしてきましたので、定期的に先行指標の現状確認をしていきたいと思う。

長短金利差

なんだかんだで10年債利回りと2年債利回りが逆転するのは年後半くらいまで時間がかかるかと思っていたが、債券市場が5月と6月のFOMCでそれぞれ50pbsの利上げを織込むにいたったこともあり、非常に短い時間であったものの早くも長短金利差の逆転にいたった。

(非常に短い時間での反転であったため、下の日次データをチャートにしたものでは反転していないようにみえる。)

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System

米国債のイールドカーブを確認してみると3年~7年債利回りと10年債利回りはしっかりと反転するにいたっており、債券利回りからは将来の景気低迷が織り込みが始まっていることがわかる。

過去の10年債利回りと2年債利回りの逆転があってからリセッションまでには数ヵ月~2年程のラグがあり、すぐに景気後退を示唆するものでもないが、今年の急速な政策金利上昇後に景気後退が待っているとは十分に考えられ、来年前半くらいには注意が必要といったところだろうか。

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System

ミシガン消費者信頼感指数

ミシガン消費者信頼感指数は歴史的な高インフレ率を背景にリーマンショック後の水準程度まで低下するに至っている。

既に小売売上高を悪化にみられるようにハードデータにも悪影響がみられるようになっており、今後も家計の購買力低下、売上・消費の低迷、企業業績の下方修正が進むおそれがあろう。

アナリストの業績予想の上方修正された比率から下方修正された比率を差し引いて算出されるリビジョンインデックスにも既に悪化がみられているが、今後もインフレの影響によって悪化が継続するのか中止する必要があろう。

Data Source : University of Michigan

航空機除く非国防資本財受注

設備投資の先行指標となる本指標では、直近の前月比データはマイナスに転じているものの、数ヵ月連続でマイナスになっているわけでもなく、今のところは景気後退を示唆するような状況ではないと思われる。

前年比データについてコロナショック後の特別な動きを反映しており、ベース効果を考えれば今年は多少の減速は当然といえようし、過去の景気後退前にみられたようにマイナス圏に沈んでいるわけではないため、やはりまだ景気後退を示唆する段階ではない。

Data Source : U.S. Census Bureau

建設許可件数

新規住宅の建設許可件数にもITバブルやリーマンショックによる景気後退前にみられたような落ち込みはみられていない。

しかし、現在の高インフレ率と金利上昇に伴う住宅ローン金利の上昇が継続すれば、近いうちにも建設許可件数に落ち込みがみられる可能性は十分にある。

今のところは問題ないが、政策金利の上昇や物価の上昇によって年後半くらいに落ち込みがみられるようであれば注意が必要になりそうである。

Data Source : U.S. Census Bureau

新規失業保険申請件数

今のところは労働市場としては非常に逼迫した状況にあり、この指標上はまったく問題ない。

人手不足が物価上昇圧力を強め、インフレ状況の悪化が加速することには注意が必要だろう。

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Data Source : U.S. Employment and Training Administration

総評

資本財受注や建設許可件数といった指標にはまだ景気後退の兆候はみられていないものの長短金利の逆イールドやミシガン大学消費者信頼感の急激な低下などには数ヶ月後から1年後の景気後退を示唆しているともみられる。

資本財受注や建設許可件数がこれらに続いて落ち込みをみせるようであれば、債券ETFや通貨でいえば将来の金利差縮小を見越した円買いに動く必要があるだろう。

今回はまとめなかったが、ISM新規受注指数や平均週間労働時間等の先行指標もあわせて確認して投資先を決めていきたい。