【金融政策】日銀は何を待っているのか

7/21に日銀の金融政策決定会合にて現在の大規模金融緩和の継続を決定した。

それとともに今回は「経済・物価情勢の展望」レポートが公表され、日銀メンバーが今後の経済動向についてどのような見通しを持っているのかが示された。

そこで、日銀メンバーの持っている経済展望・見通しを確認しつつ、日銀が大規模金融緩和を継続することでいったいどういった状況を待っているのか、期待しているのかを考えてみたいと思う。

「経済・物価情勢の展望」レポート内容

まずは展望レポートで公表された日銀メンバーのGDP成長率と物価上昇率の展望を確認する。そのあとに基本見解等のコメント部分で気になった点をピックアップしていく。

GDP成長率及び物価上昇率の見通し

実質GDPCPI
(除く生鮮食品)
CPI
(除く生鮮食品・エネルギー)
2022年度+2.4%+2.3%+1.3%
2023年度+2.0%+1.4%+1.4%
2024年度+1.3%+1.3%+1.5%

この通り、日銀の見通しとしては、実質GDP・経済成長率は徐々に減速していく見通しであり、日銀が重要視している生成食品を除くCPIは2023年度には再び+2.0%を割り込むことが予想されている。

つまりは、黒田総裁が言い続けてきたように、現在の物価上昇は持続的なものでなく、安定的に2%の物価上昇とはいえないことから、緩和が必要であるとの考え方が表れ出ている。

基本見解等のコメント等

さて、次に基本的見解等のコメント部分に目を向けてみる。

まず、経済成長については、「見通し期間の中盤にかけては、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる」と経済成長が堅調に継続するような見解概要が示されている。

目先のネガティブな要因・リスクとしては、ウクライナ情勢による資源価格や穀物価格の高騰、COVID19の感染動向やその影響、供給制約による生産下押し圧力などが上げられている。

物価上昇については、「エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押上寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される」とエネルギー価格上昇が継続しないことから、物価上昇は緩やかなものとなるとのコメントがみられる。

これらのことから、海外への所得流出と家計の実質所得や企業収益に下押し圧力を加えるとしているが、政府の所得面への政策やCOVID19関連の制約緩和による需要の増加が期待されることから、景気の回復は続くとしている。

企業収益の悪化は示唆しつつも労働市場においては人手不足の状況が継続(労働需給の改善)することから、賃金上昇率の高まるとしている。
そして、見通し期間の中盤以降は所得から支出への好循環が生まれ、潜在成長率以上の経済成長が期待できるとのこと。企業収益も供給制約の改善によって改善してくると予想されている。ただし、COVID19の制約緩和等に伴うペントアップ需要は和らぐため、成長ペースは鈍化する。

そして、労働需給の改善、経済の改善、現実の物価上昇率の高まりなどから、家計や企業の中長期的な物価上昇率の上昇とそれによる賃金交渉の変化・賃金上昇によって、物価の持続的な上昇をもたらすとする。

日銀の展望、金融政策についての疑問点

経済展望についての疑問点

まず、最大の疑問としては、所得・賃金上昇によって支出への好循環が生まれることによって潜在成長率を超えた経済成長の継続を期待しているようだが、名目賃金の上昇はあっても実質賃金は大きくマイナスとなっている状況であり(日経参考記事)、所得増加からの支出への好循環を期待することは楽観的すぎるのではないかといった点があげられる。

また、ウクライナ情勢は今後落ち着くことを前提とした見通しが多いが、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や停戦等の何らかの落ち着きがあったとしても対ロシア制裁の継続は十分に考えられることから、穀物価格やエネルギー価格の高止まり(更なる上昇はないにしても)の可能性が高く、企業収益や家計の消費への下押し影響が長く続くと思われる。

そして、日銀の見通し期間前半に実質賃金の減少(上昇しない状況)が継続するようであれば、家計の消費活動を阻害し、企業収益の回復ペースを押し下げることになると考えることができるのではないだろうかとも思われる。

金融政策についての疑問点と調整について

さて、現在の経済状況では大規模緩和の調整さえも行わない状況なわけであるが、一番はじめに示した日銀の経済見通しで経済成長や物価上昇ペースは鈍化することが予想おり、物価目標を達成しないならば緩和を継続するということであるのなら、日銀は2025年度以降にならなければ金融政策を継続すべきというむちゃくちゃな考え方をしているのではないかという疑問が生まれてくる。

仮にそのよう通りに緩和継続の考えを持っていたとして、その緩和は日本円の信用を棄損せず、日本国債市場を破壊しないままに継続が可能なものであろうかとの疑問も生まれる。

実際のところ日本円は対米ドルで1米ドル140円に迫る凄まじい勢いで減価しており、輸入コストの上昇といった悪影響をもたらしてきてている。

また、日本国債市場においても日銀の大量購入が買入れ対象の国債の流動性を著しく悪化させている(参考記事

これらの危険な状況を考慮すれば、黒田総裁をはじめとする日銀メンバーが望むような緩和縮小の経済条件がそろうまで現在の金融政策ペースを何年も続けることは難しいと思わざるを得なく、どうせ続けられないとすれば、現在の物価上昇は金融政策をいくらから調整するタイミングとしては非常に良いタイミングではないかと個人的には思っている。

このことから引き続き今年の後半に金融政策の調整がみられることを期待したい。