【米国雇用統計】2024年7月 米国労働市場の詳細確認

今回の雇用統計は、その他の経済指標も弱いものが続いていた状況にとどめを刺すかのような悲惨な結果であった。
非農業部門雇用者数は11.4万人と予想の17.5万人を大幅に下回り、失業率も4.3%と予想の4.1%よりも大幅の悪化となった。

市場では9月のFOMCで50bpの利下げを予想する声さえ出てくるほどの影響を及ぼしている。

失業率と就業者比率

失業率は今までも上昇傾向にあったが、それが大きく加速する結果となった。
高齢化などを考慮すれば、自然失業率は4.5%付近と思われるが、次回でその自然失業率を上回ることになるのではないだろうか。

就業者比率(E/P Ratio)について見ても、プライムエージの就業者比率は高水準を維持しているものの、労働力人口全体で見れば、就業者比率は低下しており、今回の失業率悪化は純粋な労働力市場の弱まりを意味することがわかる。

失業理由の詳細

失業理由では、明確な手がかりはないものの、強いて言及するのであれば、レイオフの割合が上昇している。
雇用者数の減少、レイオフの増加が今後来る労働市場の本格的な悪化を示唆するものなのか(悪化傾向は変わらないにしてもスピードと規模として危機的なものが来るのか)はわからないが…

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)

週給・時給とその他関連データ

賃金の上昇率鈍化傾向は変わらず継続。
賃金上昇に起因するインフレ(wage push inflation)の加速は起こりそうもなく、インフレ鎮静化が期待される。
一方で失業率の上昇が示すように労働市場が弱まることがあれば、再び実質賃金が減少に転じ消費及び経済の鈍化につながるほどまでに状況が悪化しないかには注意したい。

以上の点は先月と変わらない。
今回気にかかる点としては、平均週間労働時間の大幅な減少である。民間の労働時間はコロナ後最低水準まで減少している。

これは、既存労働者の労働時間の減少、雇用者数の減少、レイオフという一連の労働市場の悪化を示す教科書通りの流れが起こっていることを示唆している可能性がある。

次の雇用統計も相応に悪ければ、ある程度確信が持てることだろう。