【米国雇用統計】2024年10月 米国労働市場の詳細確認
- 2024.11.03
- 未分類
10月分の非農業部門雇用者数は予想を大きく下回り、1.2万人となった。
政府部門での増加が4万人であったことから、民間だけで見るとさらに状況は悪いと言える。
詳細確認の中で見ていくが、今回は給与以外の部分は労働市場の弱まりを示唆するものであり、雇用者数以外にも弱い点がみられた。
失業率と就業者比率
失業率は7月に4.3%まで上昇したが、9月に4.1%まで低下、10月もその水準を維持することができている。
しかし、就業者比率(E/P Ratio)は生産年齢人口全体とプライムエージともに低下しており、労働参加率の低下によって失業率が抑えられたことを示唆している。
もちろんは非常に低い水準を維持できていることには変わりないが、雇用者数の急激な弱まり、平均週間労働時間の減少と合わせてみると、再度労働市場の悪化トレンドが始まりを意味するのか注視していく必要がある。
失業理由の詳細
引き続き、失業理由では、明確な手がかりはない。
しかし、永久解雇の割合が多少大きくなっていること、任意離職の減少傾向が続いていることから、強さは感じられない。
失業理由の分類は下記を参照。
- 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
- 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
- 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
- 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)
週給・時給とその他関連データ
時給の伸びが少し回復してきており、転換点にあるようにも見えるが、賃金の上昇率鈍化傾向は変わったの判断には追加で数ヶ月分の情報をみたいところ。
いずれにせよ、名目賃金上昇はまだ強くなく、賃金上昇に起因するインフレ(wage push inflation)の加速は起こるとは考えにくい状況が続いていることに違いはない。
一方で、平均週間労働時間は依然として弱い状況が続いている。
民間の労働時間はコロナ後最低水準での推移が続いており、製造業の労働時間はコロナ後の最低水準を更新しそうな状況である。
これは、既存労働者の労働時間の減少、雇用者数の減少、レイオフという一連の労働市場の悪化を示す教科書通りの流れが起こっていることを示唆している可能性があることは以前から指摘している通りである。
実質週給及び実質時給の伸び率はプラス圏での推移が続いており、インフレ率の低下を主因として上昇ペースが加速している。(これらのデータは2024年9月分まで)
米国の消費を支えるであろうことから、素直にいい動きである。
以上の通り、今回の雇用統計では、名目賃金・実質賃金の伸びは悪くなかったものの、その他の項目については労働市場の弱まりを示唆する内容となった。
これによって11月のFOMCでの25bpの利下げは、確実なものとなっただろうが、長期金利の行方は大統領選次第といった状況である。
足元でも10年物・20年物の米国債利回りは上昇傾向にあり、魅力的な水準になってきている。
大統領選意向で大きく上昇するタイミングがあれば、米債ETFの追加購入を検討していきたい。
また、日本は衆院選の結果からして、社保改革も遠のき、財政状況が改善するような状況でもないことから、基本的には日本円は保有しないようにして外貨建て資産を積み続けるべきとの考え方も維持で良いだろう。
-
前の記事
【日本実質賃金】予想通りの早期マイナス転落 2024.10.10
-
次の記事
【日本実質賃金】賃金と消費の負のスパイラルは止まらず 2024.11.10