JOLTSからみる米国労働市場の状況

8月の米国雇用統計の非農業部門雇用者数の変化が予想を大きく下回り23.5万人となったことを受けて、労働市場の回復への不安が多少なり持たれた方もいるだろう。

しかし7月分のJOLTSをみてみると労働力の需要が衰えているどころか、需要は強まるばかりであることがみえてくる。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

米国雇用統計とJOLTSの調査タイミングの違い

二つの労働市場統計の大きな違いとして、調査対象期間だけ確認されたい。

調査対象期間
米国雇用統計対象月の12日を含む1週間
JOLTS総雇用者数:対象月の12日を含む給与期間*
求人件数:対象月の最終営業日(最終ビジネス・デイ)
採用と離職:対象月の全体

*給与期間は週や月など対象によって異なる。

以上のように調査対象期間に違いがあることから、毎月発表される統計の対象期間にずれがあることには注意する必要がある。

例えば、2021年9月に発表された米国雇用統計は8月分であり、JOLTSは7月分である。

しかし、JOLTSの調査対象期間が対象月の月末までと考えれば、それぞれの調査対象期間に非常に大きな差があるわけではない。

JOLTS求人件数の状況

米国雇用統計にて非農業部門の雇用者変化が低調に終わった一方で、JOLTSの非農業部門求人件数は過去最高値を更新した。

Data Source: U.S. Bureau of Labor Statistics

これを見る限り、デルタ株の感染拡大を原因として労働力の需要が減少しているわけではないことがよくわかる(少なくとも調査時点では)

一方で、追加の失業給付の期限が切れるのが9月の初めであったこと、コロナの感染拡大による各種施設の利用制限等によるケアギビング(介護や子育て)の必要性といった要因から労働力の供給が追い付いていないがために雇用者数が十分に増えていないと考えることができる。

もちろんこれもある種のコロナウイルスによる影響ではあるものの、労働力需要の減少といった最も嫌な形での雇用者数の伸び鈍化ではないだけ、安心できるのではないだろうか。

とはいえ、年内のテーパリング期待との兼ね合いでいうのであれば、NY連銀総裁のウィリアムズ氏をはじめ、もう1回の強い雇用統計がテーパリングへの賛成条件と考えているメンバーは少なくないと思われ、次回雇用統計がある程度しっかりした数字が出てくる必要があるだろう。

(9月FOMCではテーパリング・アナウンス見送り前提で、10月の雇用統計をみて11月FOMCでアナウンス、12月テーパリング開始のシナリオだと、このようになりそう。)