米国債供給と利回りの概況

米国の債務上限問題も12月まで先送りされることがほぼ決まり、FRBのテーパリングが近づく中で米国債需給と利回りがどのような状況にあるのかを確認していきたいと思う。

米国債需給の概況

債務上限問題が一時的な解決に向かうことになったが、下記データは基本的に9月末までのデータが多くあるため、債務上限問題が残った状況において、米国債の需給がどのようなものであったかをみることとなる。

米国債供給サイド

下のチャートが示すように、市場に出回る短期証券の量が大きく減少しており、短期証券の需給が逼迫していたのではないかと考えられる。

債務上限の問題が解決に向かい始めたことから今後は供給量にいからか戻ってくるかもしれない。
(債務上限問題は根本的な解決をみせていないため、根本的な解決まではわずかな増加にとどまると思われるが)

Data Source : Fiscal Data – U.S. Treasury Monthly Statement of the Public Debt

米国債需要サイド

需要側としてはFRBの債券保有状況をみてみたいと思う。

テーパリングがはじまっていないため、当然といえば当然だが、米国債の買い入れは以前と変わらないペースで行われており、保有額もそれに従って増え続けている。

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System (US)

債務上限問題が根本的に解決するのが12月に入ってからであること、テーパリング開始がはやくとも12月(11月アナウンスの12月スタート?)くらいになろうことから、この状況はもう少し続くものと考えられる。

米国債利回りの現状理解

米国債利回りに関しては、短期債は前述した需給面の問題やテーパリングと早くて2022年後半であろう政策金利の引き上げの影響を大きく受けないことから、水準は大きく変わっていないが、中長期債利回りに関しては今年の5,6月付近の水準までは再度上昇してきている。

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Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System (US)

イールドカーブの変化でみても、10年超の利回りに関しては上昇はまだまだだが、今後の利上げの影響を強く受けると想定される3年や5年あたりの利回りに関しては大きく上昇してきており、すでに今年の最高水準となっている。

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System (US)

ただし、TIPS利回りやBEI(ブレークイーブン・インフレ率)のデータからみるに、実質金利の上昇から名目金利も上昇してきたというよりは、将来の物価上昇期待が再度上昇したがために名目金利が再度上昇してきているように見える。(FRBのテーパリングとそれに伴うTIPSの買入によって実質金利とBEIが歪められていると解釈することもできるため慎重に評価する必要はある)

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System (US)

仮に今後テーパリング開始と米国の債務上限問題の根本的な解決がみられるようであれば、中長期の実質金利は0%の方向に上昇を開始するものと思われ、それに伴って年末にかけて名目金利は2%方向に上昇していくものと考えられよう。(正直なところ、年後半の今くらいには10年債利回りが2%付近まで上がっているものと思っていたが、予想がはずれました、、、)

又、中長期のBEIは2%前後で上げどまっているが、現在の物価上昇が一時的なものでなく、より長期化する可能性が高い問題として市場参加者にとらえられるようであれば(すでにそのような考えが広がり始めていると思うが)、BEIの上昇も名目金利を押し上げる要因となることになるだろう。

このような考えに従って今後のアセットクラスのことを考えれば、金や米国債・米国の投資適格債は弱気にみるひつようがあるだろう。通貨の中ではUSDは強気ということになるか。