【米国雇用統計】2021年9月のNFPは予想外の弱さに、テーパリングへの影響は如何に

11月テーパリング・アナウンスを確実なものとすることを期待していたが、NFPは今回も予想を大きく下回る結果となってしまった。

非農業部門雇用者数は予想の+50.0万人に対して19.4万人であった。
一方で前回分の非農業部門雇用者数は23.5万人から36.6万人へと上方修正される結果となった。

又、失業率は予想の5.1%に対して4.8%と大きな改善をみせた。

失業率や前回分のNFPの上方修正といったポジティブな側面もあったものの非農業部門雇用者数が予想を大きく下回ったわけだが、細部についてにもいつものように確認してみたいと思う。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業率と就業者比率

上述の通り、失業率は大きく改善し、少し前までは自然失業率とされていた5.0%を下回った。

労働年齢人口の就業者比率もわずかながら改善していることから、良い失業率の改善がみられていると認識して問題なく、失業率だけをみれば、十分にテーパリング条件を満たしているようには思われる。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の詳細

失業者に占める被解雇者の割合は低下しており、自己都合の退職者や労働市場への復帰者の割合が下がっていないことをみるに、失業率や失業サイドのデータからは労働市場の改善がみてとれるといえよう。

労働参加率が前回に比べれば若干低下しており、労働市場への復帰者が失業者に占める割合の伸びもみられなかったところは少し残念ではある。

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Re-entrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰を意味する)
  • 新規参加者(New Entrants) : 新たに職探しを始めた人

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

週給・時給とその他関連データ

平均週間労働時間と平均週給・時給ともに堅調な推移となっており、企業の労働力需要は強まっていることがわかる良い結果といえよう。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

今回のNFPからみる雇用情勢の解釈と今後のテーパリングへの影響

失業率含む失業関連データの大きな改善、平均週間労働時間や平均週給・時給の伸びからわかるように労働力への需要は強い状況が続いていると考えられる。

その一方で非農業部門の雇用者数が予想ほど伸びなかったことを考慮すれば、これは労働力の供給サイドの問題と思って間違いないだろう。

つまりは企業サイドとしては労働力をもっと欲しいが、十分に人材を採用することができない状況にある。
これは先月発表された7月分のJOLTSの求人数が過去最高値であったこととも整合的な考え方だろう。

以上のように労働力需要の回復は十分にみられていると個人的には考えているが、11月のFOMCでのテーパリング・アナウンスに関しては、今回の予想を大きく下回ったNFPが見送りの言い訳に使われる可能性もないとは言い切れない。

そこで、十分な労働需要を回復がみられたとFOMCメンバーに自信をもたせることができるような次回JOLTSの結果を期待したい。

又、JOLTS以外にもCPIやPCEデフレータなどが大きく伸びているようであれば、それへの対処を考慮して11月のテーパリング・アナウンスがなされるとも考えられるため、今月発表される物価関連指標にもいつも以上に注意を払うべきかと考える。

最悪、JOLTSも物価も予想を大きく下回る結果であった場合には、テーパリングのアナウンスが12月まで先延ばしになることも覚悟しておく必要があるかもしれない。