ダラス、ボストン連銀総裁退任・FOMCメンバー人事と今後の影響

倫理的に問題があると思われる金融取引が報じられたことで、ダラス連銀のカプラン総裁とボストン連銀のローゼングレン総裁が辞職することとなった。

又、クラリダ副議長についても2020年2月28日にパウエル議長がCOVID19への対応についての声明を出す前日27日に債券ファンドから株式ファンドに高額の資金を移動させていたことが報じられた。

クラリダ副議長はこの取引について、事前に計画されていたポートフォリオのリバランスであると説明しているが、FOMCメンバーの金融取引と倫理規制に注目が集まる中で非難や憶測が広がることは必至だろう。

米連銀総裁退任の今後の影響

退任することが決まったカプラン総裁とローゼングレン総裁は2021年のFOMCにおける議決権は持っていなかったこと、年内のテーパリング開始(債券購入プログラムの縮小)はほぼほぼ確実視されていることから、年内の影響は数ナイト思われる。

しかし、カプラン総裁とローゼングレン総裁はテーパリング時期に対しても早期の開始を主張してきたし、「2022年の利上げが適切となる可能性がある」との発言も過去にみられ、COVID19後の金融政策についてタカ派的であり、このタカ派の二名が退場することは今後の利上げタイミングにはいくらかの影響を与える可能性があろう。

特にボストン連銀のローゼングレン総裁は2022年はFOMCで議決権が回ってくる予定であったこともあり、2022年に議決権を持つタカ派メンバーを一人失ったとも考えられる。

まだはっきりとはわからないが、これが米国の利上げを遅らせるようなことがあれば、USDにとってはネガティブな要因になりそうである。

FRB人事への波及効果

直接的にかかわった連銀総裁が退任することになったことだけではなく、FRB人事により広範な影響が出る可能性がある。

まず、クラリダ副議長の金融取引にも怪しいものが見つかっており、今後の状況や批判の集め具合によっては、辞職に追い込まれる可能性がある。

クラリダ副議長は、そもそも来年で人気を迎える予定ではあったが、それが年内の辞職になるとなれば、今年は副議長2名とも変更という事態になってしまう。

また、パウエル議長も議長としての任期が迫っているが、今回の非倫理的な金融取引に対する対応・倫理規制の強化が重視され、パウエル議長を続投させるのではなく、理事のブレイナードを議長に押す動きが強まる可能性がある。

仮にブレイナードが議長になるようなことがあれば、最もハト派的な考えを持つメンバーの一人と考えられることからもテーパリング・ペースや利上げ開始時期をいくらか遅らせるような影響がでる可能性がある。

以上の通り、タカ派の連銀総裁の退任したことに加え、議長や副議長の席によりハト派的な人物が座る可能性があり、今後の米国の金融政策とテーパリング、USDや米国株式の動きをみえるうえでは非常に注意しなければならないトピックの一つだろう。

ひとまずは、秋にパウエル議長の続投が決まることに期待したい。