2022年1月 米国の金利・物価状況まとめ
米国の長く・強い物価上昇を背景に2022年内に3~4回の利上げが織り込まれ、FRBのバランスシート縮小もリーマンショック後のそれに比べればより早いペースで行われることが予想されるなど、急激に利上げや金融正常化への期待や不安が高まってきている。
物価上昇が長引くことや利上げタイミングが前倒しになることは以前から予想していた通りであり、これが非常に高い米国株式指数に圧力をかけることも大方想定通りといえる。
しかし、正直なところをいえば、半年ほど前は米国の利上げタイミングは2022年秋くらいになるかと予想をしてきたため(この予想に関しては今までの経済指標関連の記事を読んでいただきたい)、現在想定されている利上げペースやバランスシートの縮小に関する議論は今まで私が個人的に持っていたものとは異なるものとなってきた。
そこで、現在の米国市場の金利・利回り状況、インフレ状況を今一度まとめておき、今後の為替やETF投資に役立てていきたいと思う。
米国国債利回り状況
米国債利回りに関しては2021年前半に予想をしたときには2021年待つには10年債ベースで実質金利が0%、名目金利が2%まで上昇しているかなと思っていたが、大きく予想をはずしてしまった。
今現在でも10Y TIPSの利回りは0.5%近辺、名目金利が1.7~1.9%までの上昇にとどまっている。
Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System
昨年の利回り予想通りにはいかなかったが、実質金利が0%付近まで戻るだろうとの予想は引き続き持っておきたいとは思ってはおり、10年債利回り及びそれ以上の長期金利には現行水準よりは上昇していくと予想している。
同時に強い物価上昇圧力を背景とした急速な利上げ織込み・短期金利の上昇、早いペースの金融正常化リスクによるリスクアセットのボラティリティと不安の高まりを想定すると長短金利差は更に縮小していくことになるだろうと考えている。それに伴いイールドカーブのフラットニングも継続するだろう。
Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System
現在のインフレ状況と今後の予想インフレ率
次に現在のインフレ状況と今後の予想インフレ率・BEI(Breakeven Inflation Rate)を確認したいと思う。
インフレ状況
現行のインフレ率としてCPI、PPI、PCEデフレーターのいずれでみても急激に上昇しており、すぐに落ち着く兆しは見えない。
前年比・前月比ともにエネルギーを含むヘッドラインの値だけでなく、コア指数についてもしっかりとした上昇が続いており、インフレ・リスクは深刻なものとなっている。
Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics
項目別にCPIとPCEデフレーターをみてみても、あらゆる取り上げた主要項目の全てが強い物価上昇を示しており、例外なく幅広い範囲で物価の上昇が続いていることが見て取れる。
Data Source : U.S. Bureau of Economic Analysis
Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics
以上の状況から一般家庭・消費者は物価上昇から日常生活にとって辛い影響を受けいることは容易に想像できる。
市場やFOMCメンバーも今まで以上に深刻にインフレ・リスクをとらえていることは言うまでもない。
インフレ見通しと消費者信頼感
インフレ見通しとしては、BEIは直近の最高値からは若干低下しているものの、引き続き高い水準を維持していることには変わりがない。
一方でミシガン大学の発表している一般消費者のインフレ見通しについては直近の最高水準での推移を継続している。
Data Source : Federal Reserve Bank of St. Louis
Data Source : University of Michigan
この深刻な物価上昇やオミクロン株の蔓延等が相まってか、ミシガン大学消費者信頼感指数はコロナショック時の水準を割り込み急低下している。
一般家庭が非常に大きな悪影響を受けている可能性を示唆しており、政府側としてもFRBと歩調を合わせてインフレに対処していくことになるだろう。(少なくともFRBにそう促すようにして)
Data Source : University of Michigan
為替やリスクアセットへの影響について
以上触れてきた内容から、米国の政策金利上昇が比較的はやいペースで進むことは市場が想定している通り正しいものと考えられよう。
また、FOMCの議事録でもふれられていたように、現在のFRBのバランスシートを構成する米国債の加重平均残存期間はリーマンショック後のそれに比べて短いことから、仮にリーマンショック後と同じように再投資を徐々に止めていく方法でバランスシート縮小を行った場合には、前回のバランスシート正常化に比べて早いペースでの正常化が行われることになる。
これらのことから、利上げ及びバランスシート縮小といった金融正常化ペースは前回のものよりもはやく行われ、それは株式市場に不安を与え、リスクアセットの重石となると考えられよう。
そのリスクは長期経済見通しや将来の不安として働き、長期金利の上昇を短期金利の上昇に比べて相対的に小さくすると考えられ、前述の通り、イールドカーブのフラットニング・金利差の縮小をもたらすだろう。
また、リスク資産市場の不安感や米国金利の上昇による新興国通貨の相対的な魅力低下は、どちらもUSD高を促すように作用すると考えられ、投資先通貨としては今年もUSDが魅力的な状況が継続するものと考えられる。
新興国通貨は引き続き保有を控える必要があるだろう。
先進国通貨については、インフレ率・利上げペースとそれによる株式市場の低下具合にもよるが、JPYも悪くはないと思われ、USDJPYが大きく上昇するようであればUSD売りJPY買いに動くのも悪くないと思う。
一方でUSDの金利上昇局面であることからあえて他のAUDやNZDなどに資金をむける必要まではなく、それをするならUSDを保有しているだけで十分だろうと予想。
市場心理悪化タイミングは少なくないだろうからAUDUSDペアのショートで利益を出す機会が多く訪れるのではないだろうか。
株式は2022/1/24現在でも既ににいくらか調整が入っているが、まだこの程度では広いに行きたくはない。
しっかりバリュエーションが割安になるまで待つべきだと思っている。
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