【米国雇用統計】2022年11月 米国労働市場の詳細確認

11月分の米国雇用統計は、予想の20.0万人を大きく超えて26.3万人となった。
また、前月分も26.1万人から28.3万人へと上昇修正され、非常に強い米国雇用統計は市場にとって大きなサプライズとなった。

パウエル総裁をはじめとしたFRB関係者からの利上げ減速を示唆するような発言が米国債利回りを押し下げ、株式市場に安心を与えていた状況に不安を投げ入れる形となったと言えよう。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業率と就業者比率

失業率は市場コンセンサス通りの3.7%となり、前回から横ばいとなった。

しかし、就業者比率(E/P Ratio)は生産年齢人口とプライムエージともに低下しており、労働参加率も加味して考えれば若干の悪化ともとれるような結果である。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の詳細

前回に続いて失業理由に占める被解雇者の割合が上昇、任意の離職と労働市場への復帰の割合が若干低下となっており、失業理由の動きとしては望ましくはない。
非農業部門の雇用者変化が予想を超えたとはいえ、減速傾向にあること、就業者比率の改善頭打ち、後述する平均週間労働時間や賃金上昇の減速を見る限り、労働市場にも転換がみられてきた。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)

週給・時給とその他関連データ

平均週給の増加率の減速が継続しており、週給と時給の増加率の乖離が目立ち始めてきた。

週給の伸び率鈍化自体も不安要因であるが、週給と時給の増加率乖離、平均週刊労働時間に一段の低下がみられていることからして、人手不足が支配的であった労働市場に変化が見られ始めたと考えられる。

労働時間の減少は経済活動の減速を示唆している可能性があり、労働力の需給逼迫状況が労働力需要の減少を背景に緩和に向かっていると思われる。
悪い言い方をすれば従業員を解雇するほどではないが仕事量自体には現象がみられはじめている、将来の失業率悪化の予兆としてとらえることもできよう。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

雇用統計を受けての運用方針

今まで主張してきた米国長期債ETFの購入は、ある程度上手く利益が出始めてはいるが、思ったよりもはやく米国債利回りの低下が進んでおり(直近ピークから一段の上昇の可能性も十分あると思っていた)、慎重に積み立てを進めていたうちに急激に利回り低下が起き、投資妙味は少し減少してしまった。

しかし、複数の先行指標や雇用統計の内容からも来年以降の景気後退を示唆している状況には変わりないだろうことから、慎重な積み立て継続方針をとって問題ないとは思っている。ただし、長期債から中期債や短期債等の短い年限の債券ETFに購入をシフトしていくタイミングをみきわめていく必要がありそうである。

株式に関しては、金融引締の真っ最中且つ景気後退の不安が広がるなかでS&P500であれば少なくとも3,400ポイントくらいまでの低下してから指数購入に入りたいと思っていたが、景気後退不安がまったく意識されることなく、利回り低下だけでここまで戻してしまったことは予想外であった。

ただ、米国株式のバリュエーションは全体としてまだ自信をもって割安といえる状況にはないだろうことから、引き続き辛抱強く待ちたいと思っている。

為替に関しては、来年以降の景気後退に伴う米国利回りの低下、黒田総裁退任を考えればUSDJPYは円高方向でみておきたいと思っている。黒田総裁がここまで無意味に異次元の大規模緩和を継続するとはまったくの予想外ではあったが、その自国通貨を既存し続けた総裁もようやく退任してくれるので、円が強さを取り戻すことを期待したい。(円高になれば米国株式や米国債券ETFの購入がやりやすくなる点でもはやく1米ドル100~110円くらいに戻してほしいところ)