おもしろい行動経済・経済心理学理論まとめ
- 1. ポリアンナ理論 (Pollyanna principle)
- 2. ハロー効果 (Halo effect)
- 3. 利用可能性ヒューリスティック (Availability heuristic)
- 4. 代表制ヒューリスティック(Representativeness heuristic)
- 5. 確証バイアス (Confirmation bias)
- 6. 正常性バイアス (Normalcy bias)
- 7. アンカリング・バイアス (Anchoring bias)
- 8. 自己奉仕バイアス (Self-serving bias)
- 9. 後知恵バイアス (Hindsight bias)
- 10. バンドワゴン効果
- 11. 傍観者効果 (Bystander effect)
- 12. 多元的無知 (Pluralistic ignorance)
- 13. 一貫性の原理 (Coherence principle)
- 14. バーナム効果 (Barnum effect)
ポリアンナ理論 (Pollyanna principle)
ポリアンナ理論は、ポリアンナ効果とも呼ばれ、人は不愉快な出来事よりも楽しい出来事についてより正確且つ詳細に覚えている傾向があるとする理論である。
これはEleanor Porterの小説Pollyannaの主人公が物事の良い側面ばかりを見るようにしていたことに因んでポリアンナ理論と呼ばれている。
一説によれば、厳しい状況下でも希望をもって対処できるようにとする生存メカニズムではないかと言われている。
ハロー効果 (Halo effect)
これは人があるモノや人の一部の側面に良い/悪い印象を持つ場合、残りの部分についても良い/悪いであろうと偏った推測をしてしまうという理論である。
例えば、外見が良い人を見た場合に、その人について性格も友好的で知的な、優しいのだろうといった根拠もないバイアスを持ってしまう。
利用可能性ヒューリスティック (Availability heuristic)
まずヒューリスティックとは何らかの決定を下す際に無意識に使われる経験則のことである。
利用可能性ヒューリスティックは、自分の記憶や知っている情報を頼りにして物事を推測してしまう傾向のことである(冷静に考えれば自分の知っている情報・記憶が目の前の問題の推測に寄与しないものであっても)。
特に自分が知っているものや印紙王に残っているものを過大評価する傾向にある。
例えば、よく人は車を運転することよりも飛行機に乗って死亡事故にあう可能性を高く思ったりすることがある。
代表制ヒューリスティック(Representativeness heuristic)
代表制ヒューリスティックは名前の通り、自分が経験則的に代表的・典型的な例として無意識に考えている例を基準として、その典型例を前提に(典型例の発生確率を過大に見積もった)判断をしてしまう傾向のことである。
「自分がこうあるべき」と無意識に決めてしまっている型にあてはめることを優先して、数学的・客観的な確率を無視してしまう。
確証バイアス (Confirmation bias)
何らかの調査や情報解釈をするような際に、既に(事前に)持っている自分の信念・信仰や仮定を肯定するような情報を優先的に探してしまったり、自分の信じたいと思っているものを肯定できるような情報の解釈を行ってしまう傾向のこと。
正常性バイアス (Normalcy bias)
自分にとって不都合な出来事の発生確率や想定される影響を過少に見積もってしまう傾向のことをいう。
人には自分にって不都合な出来事を発生しにくいと考え、対策を怠ってしまう傾向がみられる。また、何らかの災害等が発生した場合にも根拠もなく「自分は大丈夫だろう」と思ってしまうこともある。
最悪災害や不幸な出来事が発生しても何らかの助けの手が差し伸べられるだろうと考えることもある。
自分自身の安全への脅威に対して、予防や備えが不十分であるがゆえに、可能性は低いのかもしれないが、いざそれが現実とな場合には人生設計がひっくり返されるということにもなりかねない。
正常性バイアスを極力回避するためには、できる限り客観的に、数値・データに基づいて万が一の不運な出来事への適切な備えを意識しておく必要があるだろう。
アンカリング・バイアス (Anchoring bias)
何にかを決定する際に、一番はじめに見た情報を過度に重要視してしまう傾向のこと。
また、後続の情報が出てきた場合にも、はじめに見た情報を基準点として、それを調整するように意思決定を行ってしまう、つまりは一番はじめに見た情報を引きずり続けてしまう傾向がある。
例えば、ある商品の価格交渉において、はじめに提示された値段Aが高めのものだったとして、次に提示された値段BがAに比べて割安であった場合、仮に値段Bが市場平均価格よりも割高であったとしても、その値段Bでの取引は望ましい取引(合理的な)と解釈されてしまうことがアンカリング・バイアスの例として考えられる。。
何らかの金融商品の購入を検討している場合、理論価格に基づいて判断するのではなく、数日前との比較で価格が下がっていれば割安でより合理的なエントリーポイントであると判断してしまうということもあるだろう。
マーケティングでは、元値を高めに設定しておいて、それに○○%OFFといった割引を追加で見せることで、あたかも魅力的な価格で商品購入が可能であると思わせる・錯覚させる手法がとられることもある。
自己奉仕バイアス (Self-serving bias)
成功を自分の努力等の自身の要因によるものと考える一方で、失敗は自分の責任ではなく外部要因によるものと考える傾向のこと。
しばしば社会的に成功した者が、社会的な弱者に対して「努力が足りないから貧しいんだ。自分は努力してきたために成功し豊かになった」と主張することがあるが、これも自分の成功は家族の支援状況や運などといった外部要因を無視して自分自身の努力によるものであるとのバイアスを持っていることからの発言かもしれない。
後知恵バイアス (Hindsight bias)
既に結果を知っている事柄について、当時その結果を予測できていたであろうと考えてしまうバイアスのこと。
例えば金融商品の運用の場でこんなことを言う顧客が大勢いる。
「リーマンショック時のように株が急落したときに買えばいいんでしょ」
しかし、実際の金融危機の最中にあっては株価が回復する・反転すると信じて買いに入ることは精神的に非常に難しいことである。また、もっと下がるのではないかと考えて買い場を失ってしまうこともよくあることである。
それが既に過ぎ去った株式市場のクラッシュについては、「あのような状況で買えばいい」などと自分がクラッシュ時にエントリーする強い精神力と反転予測能力があると自信を過大評価してしまうのである。
バンドワゴン効果
多くの人が支持している・購入している商品がある場合、その商品を所有する喜び・効用を増大させる効果のことをいう。
この理論からすれば、通常であれば同じ効用をもたらす商品Aと商品Bがあったとして、商品Aの人気が急激に上昇するようなことがあれば、商品の質に変化がなくとも商品Aの消費から得られる効用は商品Bから得られる効用よりも強くなっていることが考えられる。
傍観者効果 (Bystander effect)
自分を含め複数の傍観者がいる場合、率先してある問題へ出来事への対処や行動をしようと思わなくなることをいう。
これは、他にも行動しない傍観者が多くいることで行動しないことの責任は多くの傍観者の中で分散されること、他の傍観者が行動にでないということは自分も行動しなくて良い問題だと無意識に推測すること、自分一人が行動を取った場合にその行動の責任を一人で取らなければならず、リスクが大きいと感じてしまうことなどが傍観者効果の原因として考えられる。
担当者を明確にすることなく、手が空いていいる人といった不明確な指定のみで何らかの依頼を行った場合、誰もその依頼に対応しないといったことが例としては考えられよう。
街中で寝ているんだか倒れているのだかわからないような人がいたとして、通行人や周りの人が誰も自分からは安否確認等の行動をとらないような場合も傍観者効果によるものと考えられる。
多元的無知 (Pluralistic ignorance)
多元的無知は、集団内において自分の意見や考えは少数派であると思い込んでしまう現象のことである。
会議の場で実は自分は反対の意見を持っていても、他の人は賛成しているに違いないと思ってしまい(本当は他の人も反対意見を持っているのに)、他の人の意見を尊重しようとその意見に賛成してしまうことなどが例として考えられる。
他にも、居酒屋で飲み会をしているときに、自分は十分飲んだと思っていても、他の人は飲み足りないのではないかと思ってしまい、みんなで不本意にも飲みすぎてしまうといったことも多元的無知の結果として考えられよう。
特に協調性が重用される日本社会においては、グループの中で自分の意見を伝えることを躊躇している人も少なくないのではないかと思うが、全員がお互いのことを意識するあまりに不本意な結果につながってしまっているかもれないのだから、多元的無知に陥ることを避けるためにも言葉にして伝えることは非常に重要である。
多元的無知は大学や企業、政治の場でよくみられるとされており、政治経済活動でも重要な心理現象と考えられる。
一貫性の原理 (Coherence principle)
一貫性の原理は、既存の信条や知識、経験に照らし合わせて一貫性のあるように情報を解釈してしまう認識的傾向のことを言う。
人が新しい情報を受け取った場合、既存の枠組みに当てはめようとする心理的作用が無意識にも発生しているわけである。
もし既存の枠組みと矛盾するような情報を受け取った場合には、既存の枠組みや考えを修正しようとするのではなく、新しい情報のほうを否定・拒絶してしまうことさえある。
これは自分にとって都合が良い情報ばかりを探してしまう確証バイアスと通ずるものがあるように思う。
他社を説得したいような場合には、相手の既存の信条と合致するような形で新しい情報を提供することが重要なのかもしれない。
バーナム効果 (Barnum effect)
誰にでも当てはまるような曖昧で抽象的なメッセージや評価について、あたかも自分に向けられたものだと解釈してしまう現象のことをいう。
よく占い本や性格診断のようなものなどで誰にでも当てはまりそうな曖昧なことが説明が書いてあることがあるが、それを読んだ人は自分に良く当てはまっていると思ってしまうことは少なくない。
また、「こんな人におすすめです」などと言って曖昧な文章ばかり並べているような広告をみてリンクをクリックするようなことがあれば、バーナム効果の影響を受けている可能性があるだろう。
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