続く日本の実質賃金及び実施消費支出減少の悪循環

先日日本の10月実質賃金及び消費支出が発表され、いずれも前年比で減少が続いていることが明らかになった。

実質賃金は前年比で19ヵ月連続のマイナスとなっており、実質賃金と実質消費支出の減少の悪循環が確りと継続していることは明らかである。

一方で日銀及び植田総裁は、賃金と物価の好循環が徐々にみえはじめたと主張しているが、これは人口動態に起因する人手不足によって賃金上昇圧力がかかっていることと、愚策による通貨安によって悪い輸入物価上昇が引き起こされたことによるものであり、これらの間に好循環が起こっていると判断することは難しい。

どころか、実質賃金と実質消費支出の減少からみるに、日銀の愚策は悪循環を引き起こしているのみとみることもできる。

また、実質GDPについても先日発表された7~9月の改定値は前期比年率で2.9%減と個人消費の落ち込みがみられている。(参考記事

日銀は従来通り物価目標の達成は物価をみて判断するのなら、政策修正に難しいことはないのだが、賃金と物価の好循環を達成条件に加えてしまったことで、この状況下では政策修正に踏み切るのは難しいとみるの考えが浮かんでくる。

しかし、植田総裁の官邸入りが報じられるなど、政策修正へと舵を切りはじめたのではないかとの見方も報じられており、仮にそうなるとすれば、どのような説明と理由付けで政策修正に踏み切るのか非常に興味深いものである。

無能な方々による誤った物価認識に基づく呆れるような言い訳で金融緩和を継続してきたことからして、とんでもない理由付けをしてくるのだろう。

金融緩和の縮小は現在のインフレ率を考えれば適切であろうが、いくつかの点で日銀が取り返しのつかない失敗をしている。

まず、動くのが遅すぎて、修正タイミングとしては最悪である。
本来であれば、通貨安が進み悪い輸入物価の上昇を止め、物価の安定の確保と次の景気後退のためのカードを準備しておく必要があった。
しかし、現在は悪い輸入物価によって消費は低迷し経済状況が悪化した状況で緩和を縮小しなければならない状態に陥っている。
これでは緩和修正の程度は知れており、次の景気後退時には日本はまともな経済政策を打つことができない状況を大よそ確定させてしまった。
(仮に経済状況が許してもマイナス金利解除さえこれだけの時間を要する無能な中央銀行に更なる利上げなどを適切に判断することはできないだろうけども…)

そして、今回の物価と通貨の安定に怠慢からか能力の欠如・無能さからか失敗した日銀は信用も失っている。
少なくとも国内では日銀がマイナス金利以上のことを迅速に実施することができるとは思われていないのではないだろうか。

もはや金融政策の能力欠如に加えて、選択肢も信用も失っているとすれば、日銀は何が残っているだろうか。後は残っている政府と通貨にわずかに残る信用の枯渇まで愚策を継続することしかできないように思われる。

そして、今後実質賃金がプラスに転じることがあろうとも、それは決して日本の経済状況の好転や賃金と物価の好循環によるものではなく、海外物価の低下と人口動態による人手不足によるものだろう。
日銀の賃金と物価の好循環などは当面来ることはないのではないだろうか。