日銀審議委員の発言で再確認する日本経済の絶望

無能な日銀の政策が続き、急激な円安が続いているが、ここ数日立て続けに日銀審議委員と日銀総裁から日銀の失策継続を示唆するような発言がなされた。

そして、実質賃金の減少、個人消費支出の弱さなど、日銀の過剰な緩和政策が経済を疲弊させている状況も再確認されている。

日銀審議委員たちの発言を確認しながら、将来来るであろう日本経済の絶望を再確認してみたいと思う。

日銀審議委員の発言内容

8月31日 中村審議委員

「日本経済の先行きを展望すると、当面は海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、行動制限下で積みあがった貯蓄にも支えられたペントアップ需要の顕在化、緩和的な金融環境や経済採択の効果、企業の「稼ぐ力」の強化努力等から、緩やかに回付していくとみています」

「日本経済はデフレではない状況になりましたが、リーマンショックやコロナショック等が起き、デフレマインドの払拭には至っていません」

金融政策の理念は、物価の安定を図ることで国民経済の健全な発展に資することですので、安定的に物価が上昇する中で賃金も増加し、投資や消費等の経済活動が活発化し、これに連れて金利も上昇するという好循環の形成が重要です」

「現状の物価上昇はまだ輸入コストプッシュインフレの色彩が強いため(図
表6再掲)、販売価格の上昇が賃金上昇に繋がる前に金融引き締めに転換すれ
ば、需要が抑制され、企業の「稼ぐ力」が再び低下しかねません」

「賃金上昇を伴う2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状
況には至っておらず、金融引き締めへの転換にはまだ時間が必要です」

「持続的な日本経済の成長を実現するためには、企業の「稼ぐ力」の強化と
ともに、家計の「稼ぐ力」の強化による可処分所得の安定的な増加が必要で
す」

中村審議委員記者会見

「マイナス金利を変えていく条件ですかね、それでいうと、経済が回復をするということだと思います。名目GDPでいうと 2019 年度を超えまして良くなっているんですけど、まだ実質GDPでいくと良くなってないとか、2019 年度を超えていないということ。それから需給のギャップが、まだ今GDPでいうとマイナスになっているということは、物価[上昇]の中身がディマンド・プル型にまだなっていない」

9月6日 高田審議委員

日本経済については、
「ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられ、緩やかな回復を続けると予想されます」

「私自身としては、2%の「物価安定の目標」の達成に向けた「芽」が漸く見えてきた状況にあると捉えています」

「わが国では、根強く定着する賃金や物価は上がらないものと考える規範(ノルム)が転換する変曲点を迎えている可能性があり、今後、企業収益の改善と物価上昇に対応した持続的な賃金上昇による好循環を実現することが課題と言えます」

「2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現にはまだ距離があると考えられることです」

高田審議委員記者会見

物価の持続性について「持続性ができるかどうかというのを見極めるにはこれからの 1 年間というのがやはり重要になってくるだろう」

「金融政策を変更したから為替のところがというご意見だったんですけれども、為替のところっていうのは私も長年みていますけれども、非常に大きな要因が、というか様々な要因が大きいと思っていますし、それから日本のというよりは、海外のところの要因が、これまでもそうだったし、今もやはり大きいのかなというふうに思っています」

「ボラティリティという観点で申し上げると、特にこのYCCの関係の中で言います
と、いろんな市場にボラティリティを高めてしまうリスクがあるということもありまして、7 月の段階で弾力化を行ったということでもあります。そういう意味では、様々な市場のところに対応してきており、もちろん為替のところも市場の中の一つということだと思っています」

「マイナス金利というところになりますと、政策金利ということでもありますから、そういう観点からしますと、単なるリスク管理上のところということで言いますと、ある程度物価を抑制的にというか、物価が上振れするということの可能性が高いというような状況の中で対応するということだと思っています」

9月6日 中川審議委員

「個人消費は、物価上昇により購入量を減らすといった動きがみられていますが、新型コロナウイルス感染症の法的な位置付けが見直された後のいわゆる「ペントアップ需要」や春季労使交渉の結果を受けたマインドの改善に支えられ、実質ベースでみても、着実な増加が続いています」

「国内経済は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、
ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、当面は、緩やかな回復を続け
ると考えています」

中川審議委員記者会見

物価の見通しについてのリスクについて
「私はどちらも同じ確率というか、リスクの大きさとしてはみています」

物価上昇2%達成の目途について
「私はまだ、今見通せる状況にはなっていないというふうにお答えします」

総裁及び審議委員発言にみられる決定的間違い

彼らは1年以上にもわたり2%の物価上昇が継続、11ヵ月連続で3%を超える物価上昇、コアコアCPIが4%の上昇となっている状況でさえも安定的な物価上昇2%を達成できていないという、通常では理解しがたい物価に関する理解を示している。

これは今までと変わりないことだが、致命的な間違いの一つと思われる。

更に、それ以上に問題なのは、彼らは現在の緩和政策を維持することで賃金上昇、消費回復につながり、それがディマンドプル・インフレにつながるという好循環を産むと誤解していることである。

しかし、彼らの継続する過剰な緩和こそがアフターコロナの経済を悪化させてしまっているというのが実情であろう。

彼らはコロナ禍の過剰貯蓄か引き続きペントアップ需要につながると主張するが、過剰な金融緩和は需要の源となるはずの貯蓄が持つ購買力を異常なペースで奪い取り、実質消費を低迷させることになると気づいていないのではないか。

それは彼らが重要視する「企業の稼ぐ力」を低迷させ、賃金上昇意欲を削ぐことにつながるだろう。
そうなれば過剰な金融緩和が招くのは、通貨安による強い物価上昇と弱い名目賃金上昇であり、それは実質賃金の減少を意味するものであり、彼らの緩和策は好循環を生むどころか悪循環を生むことになる。

もはや彼ら自身が、彼らの政策自体が日本経済を悪化させる最大の要因となり得る。

実際のことろ、実質賃金は16ヵ月連続マイナス(実質賃金参考記事)、実質消費支出も7月は前年比5.0%減少に転じている(消費支出参考記事)。

また、「企業の稼ぐ力」が重要だと言いながら、低金利環境でなければ利益を上げることのできない利益率の低い企業を存続させており、収益率の低い企業を日本に増加させているのも日銀自身の責任も大きいだろう。

以上のことから、現在の致命的な日銀総裁と審議委員の間違いによって、日本経済にとって悪影響をもたらす日銀の失策は継続するものと思われ、それは現在足元で起こっている、通貨安とコストプッシュインフレ、実質賃金の減少と実質消費の低迷という悪循環の加速と増大をもたらすだけである。

経済以外のところまで話を広げれば、治安の悪化や少子化といった影響が出てくるだろう。
また、子供たちへの教育投資・教育機会の減少、特に通貨安による海外留学などの海外での教育機会が大きく失われることとなるだろう。
これは将来の労働力減少、日本人労働者の質の低下を通じて日本経済の成長力を抑制することになるだろう。

以上のことから無能な日銀が継続する過剰な金融緩和政策は、短期的にはもちろんのこと、長期的にも日本経済を大きく毀損することになるだろう。