【米国雇用統計】予想下回りテーパリング見送り口実を与えたか

今回の雇用統計で非農業部門雇用者数が予想通り75万人プラスであれば、9月FOMCでテーパリングのアナウンスかと思われていたが、結果は23.5万人と予想を非常に大きく下回る結果となった。

失業率は予想通り5.4%から5.2%まで改善した。

失業率の水準と、過去の非農業部門の雇用者数(それぞれ改定後)が6月は90万人以上、7月は100万人以上となっていたことや物価の上昇率を考えれば、テーパリングを開始するには十分な状況にはなっていると思うが、非常に慎重なFOMCメンバーにとっては、今回の雇用統計結果はテーパリングを先送りにする良い口実になるものと思われる。

パウエル議長や何人かのFOMCメンバーはもう一段の労働市場の改善をテーパリングが必要と発言していたことから、9月のFOMCではテーパリングのアナウンスがされない可能性が濃厚となったと考えられる。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業率と就業者比率

非農業部門雇用者数が予想を大きく下回ったとはいえ、プラスには変わりなく、失業率や就業者比率などについても改善していないわけではない。

失業率は上述の通り改善しているし、就業者比率についてもプライムエージと全体ともにわずかであるが改善している。(コロナ前の水準にはまだまだ届かないが、、)

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の詳細

失業者に占める被解雇者の割合は引き続き低下傾向にある。
又、失業理由の中でもポジティブな理由である労働市場への復帰者の割合は上昇傾向にあり、失業理由という観点からみた失業状況も改善が続いている。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Re-entrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰を意味する)
  • 新規参加者(New Entrants) : 新たに職探しを始めた人

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

週給・時給とその他関連データ

賃金の伸びは引き続き強い水準にある。
しかし、COVID19の感染者数の状況からして、再度低賃金層が母数に含まれにくくなっている可能性もあり、賃金上昇に望ましくない格差が拡大している可能性はある。
FOMCメンバーもこの点は気にする可能性が十分あるため、今後も注意を払いたい。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics