2022年8月 先行指標からの経済状況確認
- 2022.08.07
- 経済・マーケット
米国の第二四半期のGDPが発表され、2期連続のマイナス成長が確認された。
一方でバイデン大統領をはじめとする要人の多くは、労働市場の強さ等を理由として現在の米国経済は景気後退の状況にないとしている。
そのバイデン大統領の発言を肯定するような形で7月の米国雇用統計は予想を大きく上回る結果となっている。
現在の経済状況が景気後退なのか、テクニカル的なものにすぎないのかはさておき、今後もはやいペースで政策金利の引上げが続くであろう環境下において、先行指標が示す今後の経済状況についてみていきたいと思う。
主要先行指標の確認
長短金利差と実質金利
10年債利回りと2年差利回りのスプレッドは、現在のところは再度マイナス圏に突入し、ITバブル時以来の大きなマイナス幅となっている。
過去のイールドカーブの逆転は、ほぼ正確に将来の景気後退を予測してきたこともあり、今後の明らかな景気後退の可能性には十分に注意する必要があるだろう。
Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System
実質金利は名目金利の急激な低下を反映して0%付近まで低下している。
Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System
ミシガン大学消費者信頼感指数
現況指数にわずかな改善が見られたことによって消費者信頼感はわずかな持ち直しがみられたが、期待指数は前回よりもさらに悪化しいている。
現況指数も依然として過去最低水準にあることから、消費者心理は悪化が続ていることがうかがえ、将来の消費に悪影響を及ぼす可能性がある。
CBの消費者信頼感指数も悪化がみられており、より消費者心理の悪化は確かなものとなってきている。
Data Source : University of Michigan retrieved from FRED
航空機除く非国防資本財受注
設備投資の先行指標となる本指標では、前月比での伸び率が弱まり始めているようには見られるものの、前月比でのマイナスが続いていたり、頻繁にみられる状況でもないことから、景気後退を示唆するようなことはないと思われる。
政策金利引上げによる資金調達コストの上昇の影響はまだみられていない状況だろうか。
Data Source : U.S. Census Bureau
建設許可件数・着工件数
住宅ローン金利の上昇を一因として住宅関連指標には悪化がみられるものの、明らかに危険な動きはまだみられておらず、引き続き注視が必要な程度だろう。
しかし、今後も住宅ローン金利の上昇と物価上昇に伴う住宅関連コストの上昇が続く可能性が高いことから、悪化が続く可能性も高めだろうか。
Data Source : U.S. Census Bureau
新規失業保険申請件数
非常に僅かな上昇ではあるが、新規失業保険申請件数には増加がみられている。
まだまだ数字としては小さな動きではあるが、バイデン大統領等が現在の経済が景気後退に入っていないとする大きな理由しているあげている強い労働市場の先行指標なだけに、今後はより一層注目していく必要があるだろう。
Data Source : U.S. Employment and Training Administration
先行指標総評
8月はじめにとれるデータで作成をしてみたが、前回に先行指標を確認した6月中旬からは大きな変化はみられてなかったと考えている。
長短金利のマイナス幅が大きく拡大していること、消費者信頼感の低下が継続していることなどは、将来の景気後退をより強く示唆するようになっているようには思われる。
投資方針についても株式のバリュエーションが魅力的な状況になるまで待つこと、長期債券ETFへの投資機会を待つことといった方針は変える必要がないように思っている。
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