【米国雇用統計】2022年7月の米国労働市場の詳細確認

7月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が市場予想の24.9万人を大きく上回り52.8万人となった。前回分も37.2万人から39.8万人へと上方修正された。

失業率についても市場予想では前回同様の3.6%とされていたが、結果は3.5%とこちらも予想以上の改善がみられた。

いつものように雇用統計の主要項目について詳細をみておきたいと思う。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業率と就業者比率

失業率には予想を超えた改善が見られ3.5%まで低下することとなったが、参加率には改善が見られず、就業者比率も前回からほぼ横ばいという結果となった。

プライムエージの就業者比率は既にほぼコロナ前の水準を回復しているし、高齢化とコロナによるリタイアがあったことから、就業者比率もこれ以上の改善は見込まれにくいところまで来ているだろう。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の詳細

失業理由のうち被解雇者の割合は引き続きコロナ前の水準にあり、まったく問題はみられない。

労働市場への復帰者の割合も前月に比べれば低下したものの、依然として高い水準にある。
自己都合の退職者の割合が前月に比べれば増加しているが、売り手市場を背景により良い条件の職場を探す動きが増しているのかもしれない。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)
  • 新規参加者(New Entrants) : 新たに職探しを始めた人

週給・時給とその他関連データ

6月からは大きな動きはなく、引き続き名目賃金は高い上昇率をたもっている。
人手不足の継続を考えれば今後も名目賃金は高い上昇率が続くと思われる。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

しかし、実質賃金(6月時点)は引き続き減少傾向にあり、変化率のマイナス幅が大きくなってきている。賃金上昇が物価上昇に追いつかいない状況にあり、家計の購買力の低下とそれによる家計消費の減少につながる恐れがあろう。

家計状況が悪化していることは最近にミシガン大学消費者信頼感指数やCBの消費者信頼感指数からも明らかである。

雇用統計結果と今後の金融政策

今回の予想を大きく超える雇用統計を受けて9月の75bpの政策金利引上げの織込みが一気に進んでいる。

このままのペースでの金融引締めでは、労働市場の逼迫を止めることができず、企業が労働者を集めることに苦労をしていることがうかがえ、賃金上昇圧力の強まりや生産コストを上昇させ、最終商品価格も引き上げが続くことになるだろう。
より速い、それこそ失業率の上昇を伴うようなペースの金融引締めを行うくらいでなければ物価上昇はとまらないのかもしれない。

ひょっとすれば年末には政策金利が4%付近といったことも考えられるのではないだろうか。

Source : CME FedWatch Tool