2022年9月 米国の金利及び期待物価上昇率の状況確認

半年ぶりとなるが、米国の金利の現状、今後の物価上昇について市場がどのように想定しているのかを確認し、そこから簡単に投資戦略について考えてみたいと思う。

米国国債利回り状況

米国の短期証券・短期債利回りは、米国の政策金利の引き上げに伴い、上昇をつつけている。一方で10年債利回りは、目先は上昇基調にあるものの6月の最高値を超えられずにおり、3.35%前後での推移となっている。

実質金利については、10年実質金利は半年前から予想してきた通りマイナス水準から0%を超えてきた。現在は上昇傾向が続いており、1%に迫るところまできている。

リーマンショック後の10年実質金利は1%前後での動きが続いていたため、その通常の水準が近づいているとは思われるものの、現在の異常に高い物価上昇を抑制するために一時的には1.5%を迫るような動きとなることも考えられよう。

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System

長短金利差の縮小も予想通りの動きとなっており、長短金利差の縮小とその後の長短金利差の逆転が起きている。

短期債は政策金利の引上げ織込みが進んでいる一方で、長期債については将来の景気後退とそれへの対応としての政策金利引下げを織込んでいることの表れであろう。

10円債利回りと2年債利回りはしっかりと逆転。年末くらいに逆転かと思っていたが思っていたよりも早く長短金利差が逆転した。

ITバブル崩壊前やリーマンショック前にみられた10年債利回りと3ヶ月債利回りとの逆転はまだ起こっていないが、スプレッドは縮小傾向にあり、2022年末にも逆転していてもおかしくないだろう。

そうなれば、想定よりもはやい段階でマーケットの大きな下落が来るかもしれない。

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System

期待物価上昇率・インフレ見通し

米国の名目金利と実質金利の差であるブレークイーブンインフレ率は2022年3月から4月ころにピークをつけてからは、緩やかな低下基調にあり、市場では長期の期待インフレ率が落ち着いてきていることが示される。

Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System

ミシガン大学の消費者調査におけるインフレ期待についても3月頃にピークとなった後は減少傾向にあり、市場関係者だけでなく消費者も将来の期待インフレ率がいくらか落ち着いたものになると考えているようだ。

これらは、今までの想定よりも早い段階で米国経済が冷え込むことを示唆しているものと考えられる。

Data Source : University of Michigan

今後の投資戦略について

現在の状況から市場が今まで想定していたよりもはやい段階での景気の冷え込みを織り込みはじめてきた。しかし、目先は異常に高いインフレへの対応として政策金利の引き上げ、短期金利の上昇が続くことはほぼ明らかである。

最近のFOMCメンバーの発言からも米国の経済を多少なり悪化させようともインフレ対応を優先させるつもりであることがわかる。

そうすると、政策金利のはやいペースでの上昇によって長期の期待インフレ率はさらに低下、実質金利は上昇していくものと考えられる。そして金融引締と実質金利の上昇は株式等のリスクアセットの下落要因になるだろう。

そのことから引き続き米国株式の購入をはじめるタイミングではないと考える。
一部ポートフォリオにいれるにしてもディフェンシブセクターのものを検討するくらいだろうか。

債券ETFについては以前から想定してきた通り、年後半での米国の長期債ETFの段階的な購入をねらう方針でよいと思っている。景気後退時に恩恵を受けれらるように米国国債ETFや投資適格債ETFの購入をねらいたいところである。

新興国再検討はUSD高によって新興国の信用力が低下するため、投資は危険だろう。
新興国株式も同じことがいえる。

為替取引については、日本の金融政策の転換を期待してUSDJPYのショートをいれてみたいという思いもあるが、日銀と黒田総裁の失敗・機能不全が予想をはるかに超えるものであり、いつ改善がみられるかわからず、躊躇してしまっている。
本の物価上昇が3%超えたところで政策転換を期待して少額でUSDJPYショートをいれてみるといったところだろうか。