米ドルの覇権に歪か 米ドルから離れる国々
今年に入ってからアフリカ諸国やアジア諸国を中心に米ドルでの取引から距離を置こうとする動きがみられてきた。
これは米中の覇権争いやウクライナ・ロシア戦争による西側諸国とロシアとの対立の激化によって、中国・ロシア寄りの国々が今までの米ドルでの国際取引をその他の通貨で置き換えようする動きが加速してきたものと思われる。
ASEAN諸国もその公式協議において、財務大臣や中央銀行総裁たちが米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドへの依存度を減らすことを協議している。(参考記事)
ASEAN諸国はローカルカレンシーでの取引スキームを通じて、取引上の主要通貨への依存度を減らすことを目指したいようである。
また、インドネシアの大統領は、海外の決済網から国内事業者の発行したクレジットカードへの移行を推奨している。これもウクライナ・ロシア戦争に伴うロシアへの制裁の影響が広がることを警戒しての動きのようだ。
アジア諸国だけでなく、アフリカ諸国においても米ドルでの国際取引から、その他の通貨での取引に移行することで米ドルへの依存度を低下させようとする動きがみられる。
エジプトはインドからの米の輸入に際して、米ドルでの支払いが困難であることから、インドルピーでの決済を採用する動きが出てきている(参考記事)
これはインドルピーで国際取引を行う18の国に加わることを意味しており、米ドルのプレゼンス低下、インドルピーへの置換えが加速することとなる。
さらには、米ドル以外での取引の広がりは、アフリカやアジア諸国だけでなく、米国と関係の近い欧州でさえ見られる。
数日前には中国とフランスとのLNGの取引において、中国元での取引が成立したと報じられている(参考記事)
もはや米国と関係の近い国でさえも、中国と取引をする場合には現地通貨での取引を行うケースが増えてくることの兆候なのかもしれない。
今後は、原油取引など現在は米ドルで取引されることが当たり前の資源等についてもローカルカレンシーでの取引が増えていくものと考えられる。
それはサウジアラビアとイランが中国の仲介で関係を改善しようとする動きからもわかるだろう。
仮にエネルギー取引において米ドルがプレゼンスを低下させることになれば、時間はかかるだろうが米ドルが唯一の基軸通貨としての地位を失うことになるかもしれいない。
日本の個人としては急ぐ必要はないが、米ドル以外のユーロ等の通貨も含めた通貨分散が必要にあってくるだろう。
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