2022年10月 主要各国のインフレ状況まとめ

カナダ中銀が金利引上げペースを鈍化させ、FRBも金融引締ペースをいくらか緩めるのではないかとの期待感が広がっている。

一方で欧州を中心に物価上昇ペースの加速がみられるなど、主要国のおかれている状況は非常に複雑である。

再度主要国のインフレ状況をまとめてみることで、できる限り各国の状況を理解できればと思う。

主要先進国中央銀行の物価目標

今回もインフレ状況をみていく前に主要先進国の中央銀行が持つ物価目標を確認しておく。

  • 米国:2%(Flexible average inflation targeting)
  • EU:2%前後
  • 日本:2%
  • 英国:2%
  • 豪州:2~3%
  • NZ:1~3%
  • カナダ:1~3%

これらの主要国・地域のインフレ率はすでに目標を大きく超えてきている状況にある。
基本的にはインフレ率が各インフレ目標に戻ってくるまで金融引締が強まっていくと考えてよいだろう。

各国のインフレ状況

米国のインフレ状況

米国CPIのヘッドラインの伸び率はピークアウトの兆しが見えている。PPIもピークアウトの動きがみられている。

一方でコアCPIの上昇ペースはむしろ加速しており、エネルギー価格上昇が主な要因だったところから、広い品目に価格上昇が広がっていることを意味している。
それに原油価格は高止まりが続いており、総合指数の上昇鈍化を思うように進むかは怪しい。利上げだけでなくFRBのバランスシート縮小が進まなければ思うようにインフレ抑制を達成できない可能性もあろう。

行ってしまえば、その他の経済指標に減速はみられるものの、物価上昇指標の状態はほとんど変わっていない。

項目別にみれば、引き続き食品価格や電気料金、住宅費用といった生活に欠かせないものの価格が急激に上昇しており、家計の購買力を奪っている状況も変わらない。
今後住宅需要の低迷から家賃上昇に歯止めがかかると思われるが、CPIに影響が現れるのは来年以降と思われ、すぐにCPIを下押しする材料にはならないと考えられる。

また、ミシガン大学の消費者調査によれば、消費者の期待インフレ率は再上昇しており、インフレの粘着性の強さを示している。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

Data Source : University of Michigan

PCEデフレーターに関しても基本的にCPIと同じような動きとなっている。
PCEデフレーターとCPIとの差も2%ほどの大きい水準が数か月継続している。

Data Source : U.S. Bureau of Economic Analysis

Euro Areaのインフレ状況

9月のHICPでは、ユーロエリア及びドイツでの物価上昇ペースの加速がみてとれる。
各国の統計局の10月分CPI速報値ではイタリアやドイツでの物価上昇の加速がみられており、欧州経済はスタグフレーションの様相を呈している。

ウクライナ・ロシア戦争にも終わりが見えない状況が続いており、欧州経済のさらなる悪化と物価上昇圧力が継続するものと思われる。

ECBは景気後退に陥ろうともインフレ抑制を優先する姿勢を示しており、欧州経済は非常に厳しい状況が続くだろう。

Data Source : Eurostat

日本のインフレ状況

日本のCPIは引き続き日銀が目標にしている2%を上回るペースで上昇している。
速報性のある10月の東京CPIでは総合指数が前年比で3.5%、生鮮食品を除くCPIが前年比3.4%、生鮮食品及びエネルギーを除くCPIが前年比2.2%の上昇となっており、今後も物価上昇ペースの加速が示唆されている。

日銀も10月の展望レポートにおいて、再度物価見通しを引き上げている。

それに9月の生鮮食品及びエネルギーを除くCPIは前年比で2%弱の伸びとなっており、今年度末にも2%を超える可能性があろう。
この状況でも日銀が経済危機の真っただ中で行うような大規模緩和をまったく調整しないことから、物価上昇の継続、円安状況の継続から家計が購買力を奪われ続けることは明らかだろう。

イギリスのインフレ状況

イギリスのインフレ状況にもまったく落ち着きが見られない。
特に食品価格の前年比上昇率が14.5%と非常に深刻な状況になっており、イギリスの一般消費者は苦しい状況に置かれているものと考えられよう。

ONSによれば、大人の50人に1人がフードバンク等のチャリティ団体からの支援を受けているとのことである。
小売売上や鉱工業生産といった経済指標もその他の国に比べても状況が悪い。

不安定な政権運営もあいまって英国経済も他の欧州諸国と同様に非常に厳しい状況が続きそうである。

Data Source : Office for National Statistics

オーストラリアのインフレ状況

10月に発表された第三四半期のCPI、刈込平均CPIはどちらも予想を上回る結果となり、想定以上の金利引上の必要性を示す形となった。

物価の前年比上昇率が10%を超えるような欧州諸国と比べればまだ多少低いが、刈込平均で6%を超えてきていることを考えれば、安心していられる状況にないだろう。資源国であることとウクライナ・ロシア戦争の影響が欧州諸国に比べて小さいことから欧州に比べれば経済状況は安定した状況が続くとは思われる。

Data Source : Australia Bureau of Statistics

ニュージーランドのインフレ状況

オーストラリアとは異なり、ニュージーランドのCPIは若干上昇ペースに鈍化がみられた。
しかし、予想を超える上昇ペースであったため、楽観できる状況ではない。

オーストラリアの政策金利が2.60%なのに対して、ニュージーランドはすでに3.50%と比較的はやいペースで利上げをしてきた。しかし、それだけ金利を引き上げていても前年比7%を超える上昇が続いており、いまだにインフレ抑制に十分な対応ができていないと考えることができよう。

今後も追加の政策金利引上げが継続すると思われる。

Data Source : Stats NZ

カナダのインフレ状況

カナダのインフレ状況はCPIの総合指数でみる限りは他の主要国に比べてピークアウトととれるような動きが強まってきている。

しかし、食品及びエネルギーを除くCPIでみた場合には、原則は見られておらず、幅広い品目に物価上昇圧力が広がっていることがうかがえる。

BOCはすでに政策金利を3.75%まで引上げており、前回の金利引上げは市場の予想に反して減速がみられた。ただ、前述の通りコアCPIでみれば上昇ペースに陰りがないことから、緩やかなペースでの金利引上げが必要になってくるのではないだろうか。

Data Source : Statistics Canada