日銀の失策が招く国の墜落

10年失敗を続けた黒田前総裁が残した失策の撤廃に慎重になってしまう奇異な新総裁。

コアコアCPIの前年比上昇率が+4%を超えて、物価目標の2倍以上の上昇率となっていながらも物価目標は達成されていないと主張してしまう、そんな彼が人気の5年間でもたらすであろう、過剰緩和による経済・社会の凋落について考えてみたいと思う。

貧困の拡散

あえて言及する必要もないかもしれないが、日本の実質賃金は13ヵ月連続の減少となっている。
これは日銀が2%を超える物価上昇が1年以上続いているにもかかわらず、異常な大規模緩和を修正することなく継続、通貨安を放置することによって物価上昇ペースを加速させていることが一因である。

特に食品価格の上昇が凄まじいことから、元から稼ぎの多くない一般家庭をより一層貧しくするような状況となっている。

政府の電気代・ガス代の負担軽減策やガソリンの補助等が2023年秋までは続いているが’(ガソリン補助は段階的廃止)、その軽減策が終わった後には光熱費の大きな上昇が待ち受けている。

エネルギー価格の低下によって一時的に輸入物価の上昇が和らいではいるものの、日銀の失策によって通貨安が全く止まっておらず、輸入物価は高止まりすることが想定される。これは貿易赤字の拡大にもつながる恐れがあり、それが更に通貨安につながるという悪循環に陥る可能性もあろう。

米ドル建てでみれば、日本人の平均年収はまだ何とか3万米ドル以上だが、中央値でみれば2.6万米ドル程度しかない状況までに貧しくなっている。 手取りでいえば2.2万米ドルほどとなっており、日本の一般家庭がどれだけ貧しくなったかが良くわかる。

少子化の急加速

実質賃金の減少、貧困の拡散からも明らかではあるが、一般の給与所得者が子供を持つことは経済的にますます難しいこととなってきている。

子供一人の大学卒業までの養育費は3,000万円から4,000万円ほどといわれているが、単純に養育費もCPIと同じようなペースで上昇していくと考える場合、年間3~4%ほど費用が上昇することとなる。

実質賃金が急激に減少し、自分たちが食べていくだけでも大変な状況が続いている状況において、子育ての余裕がなく、子供を作らいない選択をする人が増えることは自然なことである。

通貨安によってコストプッシュインフレを加速させる日銀の政策は、実質賃金の減少を通じて将来の経済の担い手を減少させ、長期的に日本の成長力を低減させることになるだろう。

そして、激減する現役世代は高齢者を支えるために、今以上に大きな社会保険料負担を強いられ、経済的絶望の中で陰鬱な生活を送ることになるだろう。希望のない沈んだ社会に生まれる子供は減り続けることだろう。

もちろんこれは社会構造や政治、行政の責任も大きいが、日銀が愚策を続けることで少子高齢化問題を悪化させていることは間違いないだろう。

格差の拡大と固定化

異常な大規模緩和によって都心の不動産価格は急速に上昇、日本株もバブル期以来の高値を更新し続けている。

既に株や都心の不動産を持っている資産家は恩恵を受ける一方で、資産を持たない人にとっては前述のとおり実質賃金が下がり困窮するばかりである。

これは持つものと持たざる者の格差を拡大し、固定化することにつながある。また、もちろんのことトリクルダウンなどというものが起きないことは過去の経験からも明らかである。

そして、物価上昇は高所得世帯よりも所得にしまえる生活必需品の出費割合の高い低所得世帯をより苦しめる。
食品等の生活必需品により多くの費用を使分ければならなくなった場合、子供がいる家庭では教育費等の次世代への投資を抑える必要迫られ、将来の教育格差・所得格差を助長して格差の固定化が進むこととなろう。

失望の広がりと治安の悪化

物価上昇の加速の中で貧困が社会に広がり、望む教育を受けられない、娯楽を楽しむための十分な資金もないといった不満ばかりの若者が増加することになる。

そして格差の固定化と下がり続ける一般庶民の実質賃金を前に将来への希望さえも失い、現在にも将来にも失望した状態に陥る。

将来にも希望がなく、現在に失うものがない人たちがどのような行動を取ることになるだろうか。

貧困状態から生命維持のために金品を奪う行動もあろうが、貧しさのために不満が募り欲求を満たす手段として犯罪に走るものが増加するものと思われる。
過去の所得と貧困との研究の多くは、生命維持のために犯罪を行うというよりも、相対的貧困からくる不公平感、格差への不満が犯罪の増加につながるとしたものが多くみられる。(参考)
また、貧困者の社会に対する恨みが豊かな者たちへ犯罪という形で向けられることがあると主張されることもある。

現在の日銀が推し進める物価高による貧困の拡散と固定化は、日本社会に既に存在した若者と高齢者との世代間格差とそれに対する不満を強め、若者たちの社会への反感を強め、彼ら彼女らの不満を行動を取るに十分なほどに増大させることになるように思う。

自国通貨の信用失墜

さて、最後に来るが自国通貨、円の信用失墜である。

短期的要因としての実質賃金低下、長期的要因としての少子高齢化の加速による生産力減少、これらによる経済力の低下によって先進国からの脱落に向かう。

経済力の低下は国際的な日本円のプレゼンスを低下させることとなる。また、少子高齢化加速に伴う競争力の低下は貿易赤字を拡大させ、国際収支要因からも通貨安を加速させる。

通貨安と輸入物価上昇・貿易赤字拡大の負のサイクルに陥る。
このサイクルに陥ったとしても、自国通貨建て国債の多い日本がデフォルトに陥ることは考えにくいものの、通貨自体が信用を失うことによって国外からの輸入取引に支障をきたす実質的なデフォルト状態となる可能性は十分にあるだろう。(特に少子高齢化と通貨安があわされば十分に考えられるのではないだろうか)

通貨安と物価高の連鎖が始まれば、後は実質賃金の低下、格差拡大と固定化それに伴う治安なの悪化を伴い先進国とは言えないような状態へと日本は墜落するものと思われる。

これの原因が全て日銀にあるとは言わないものの、この流れに引き込む要因の一つを作り出しているのは間違いなく日銀の施策であると考えられる。

この国の墜落に巻き込まれないよう海外資産及び現物資産への分散が必要性が高まっていくだろうし、計画的に準備をしていきたいものである。