【米国雇用統計】2021年6月分雇用者変化は予想を超える強い結果

今回の雇用者数は+85万人と予想の70万人を超えて非常に強い結果となった。

一方で失業率は5.9%と予想の5.6%よりも高かったばかりか、前回の5.8%に比べても悪化する結果となった。

失業率の上昇はみられるものの、詳細をみていけば、この上昇はなんら問題にはならないものと考えられる。

Data Source : BLS retrieved from FRED


失業率と就業者比率

Data Source : BLS retrieved from FRED

この通り失業率の悪化はみられるものの、就業者比率の悪化していない。
(労働参加率×(1-失業率)で表すことができ、失業率と労働参加率両方の影響を反映したものとみることができる)

就業者比率が悪化していないこと、雇用者数はしっかりと伸びていることを考えれば、今回の失業率の悪化は心配する必要があるものではないと考えられる。

また、下記で触れるが、失業理由の内容からいてもネガティブなものは減少しており、経済状況の改善から転職活動などに打って出る者が増えていると考えられよう(前回のJOLTSも示すように)。

失業理由の詳細

Data Source: BLS retrieved from FRED

失業理由の区分は以下の通りである。1番目の解雇者が増えている、特には一時解雇ではなく恒久的解雇が増えることが大きな問題であるが、その他のものは自主的なものや労働市場への参加を意味するため悪いものではない。

そして、上のチャートをみればわかるように、解雇を理由にする失業は減少している。一方で自己都合の退職や労働市場への復帰者が失業者全体占める割合は増加しており、経済回復により自信を持った人が転職や求職活動を再開させているようにみえる。
また、一時解雇を除く被解雇者が失業者に占める割合も低下しているため、失業理由の内容からすれば、労働市場はは改善していると考えられる。

  1. 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  2. 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  3. 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  4. 労働市場への復帰者(Re-entrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰を意味する)
  5. 新規参加者(New Entrants) : 新たに職探しを始めた人


週給・時給とその他関連データ

週給・時給はしっかりとした伸びになった。
今後のインフレ上昇の可能性を考慮すれば、しっかりと伸びてもらわなければ、消費活動に影響が出かねないため、今後もしっかりとした伸びが続くのか注目したい。

Data Source: BLS retrieved from FRED

週間の平均労働時間は若干減少した。

Data Source : BLS retrieved from FRED


まとめと余談

上述の通り、失業率は悪化を示したが、強い非農業部門雇用者数の伸びと前回水準の就業者比率をみれば、労働市場の改善について悲観的になる必要はないだろう。

むしろ、失業理由の内訳ではポジティブな改善がみてとれ、高い賃金を求めた転職活動や労働市場への復帰が進んでいるととらえれば、改善ペースは今まで変わらずしっかりとしたものと考えていいと思う。

この労働市場の改善を考えれば、更なるインフレリスクの高まりが考えられる。

前回のFOMCで発表されたドットプロットでは、2023年に2度の利上げが示唆されたが、労働市場の改善とCPIなどが示すようなインフレ率の高まりが続くことを考えれば、個人的には2022年後半の利上げが十分期待できると考えている。

そうすれば、目先進んでいるUSD高が今後も続くと考えられ、EURUSDやAUDUSDなど通貨ぺアでのショートポジションがおもしろいのではないだろうか。

USD高が新興国経済、新興国のマネー市場に悪影響を及ぼすこととなった際にも、それらのペアではもう一段のUSD高が期待できる点でもUSD買い、EURやAUD売りが魅力的にみえる。