日銀金融政策決定会合:実質賃金を下げ続けることを表明
日銀は、非常に高い日本の物価上昇を気にせず、依然として物価目標2%の上昇を達成していないと言い張り異常な大規模緩和の継続を決定した。
日銀はその無能さを遺憾なく発揮し失策を継続、実質賃金の低下、自国通貨の毀損を推し進める決意を再度表明する形となった。
日銀総裁からもおもしろい発言が複数出てきたためまとめておきたいと思う。
2023年6月 日銀総裁記者会見発言内容
物価動向について
物価動向についてはの発言は以下のとおりである。
物価トレンドは下落局面にあると今回も主張しているわけであるが、CPI総合指数の前年比上昇率の低下は、政府の電気代・ガス代の負担軽減策による下押しによるところが大きく(大よそ1%ほどといわれている)、実際のところの物価上昇率が低下しているということはない。コアコアCPIの上昇率に至っては上昇ペースが加速しており、前年比+4%を超えるに至っている。
また、ヘッドラインのインフレ率については海外要因によるコストプッシュインフレであり、どうしようもないとしているが、異常な大規模緩和が招く円安がそれを助長していることは間違いなく、その状況を日銀が対処せずに放置していることに変わりはない。
- 「コストプッシュの影響は徐々に減衰していき、今年度半ばにかけて物価上昇のプラス幅は縮小していくとみている」
- 「(物価について)下がっている局面にあるわけですが、下がり方が思っていたよりもやや遅いかなといった感触を持っている」
- 「基調的なインフレ率が現在見えているインフレ率とかなりずれているために説明が難しくなっている」
- (持続的安定的な2%が見通せる状態について)「中心見通しだけで決まるわけではない」
- 「最頻値だけでなく分布をみて行動する」
- 「ヘッドラインのインフレ率でいえば3.5%と文字通り2%のインフレ目標と比べれば大きく上振れているわけで、これが国民の大きな負担になっていることは強く認識している。これの原因が何かといえば、海外発のコストプッシュインフレーションである。それを日本の経済政策で直接どうこうすることはできない。」
賃金推移について
下記発言の通り、賃金に関しては、目標としておらず、あくまでも物価をみていくとしている。わざわざ、賃金上昇を伴う形で、2%の物価安定の目標を目指すと文言の追加をしていたが、それはなんだったのだろうか。
- 「名目賃金が緩やかな増加を続けているが、輸入物価の上昇を起点とした価格転嫁の影響から消費者物価がそれを上回って上昇している」
- 「賃金の方について何か目標をもって、それが達成されたら政策を、といういうふうには考えておりませんので、あくまでも物価」
金融政策について
足元の物価ではなく、将来の見通しが重要であるとの発言があった。
これが本当であれば、足元の物価が2%を下回っていたとしても、将来の物価見通しが2%を超えるような場合には政策が変更されると読むこともできるが、本当にそんなことを考えているのだろうか。
そもそも足元の物価ではなく(現在ほどの高い物価上昇を無視するほどには実績値を無視して)、将来見通しで判断する機動的な政策運営とはいったいどういったもの考えているのだろうか。
- 「政策は半年から一年半先といった、そういう先に影響が出てくるため、先の見通しのが変化すれば、足元がそんなに動いてなくても、機動的に政策を変更する」
以上の通り、会見内容からは政策転換の判断材料は抽象的なものばかりが並んでおり、特段丁寧な政策維持の説明がされているようにも思われない。今まで通りといったところであろう。
大規模金融緩和維持から通貨安とそれによる輸入物価をはじめとする物価上昇圧力の強まり、実質賃金の継続的な悪化がほぼ確実なものとなった。
6月以降はガソリン価格の政府補助の逓減、秋からはガソリン補助と電気代・ガス代負担軽減策の終了があることから、通貨安と相まって現在の日銀のインフレ鎮静化の予想通りにはいかないのではないだろうか。
今の日銀政策は意味もなく物価上昇率を押し上げることだけを目的としており、そのためには国民の経済的疲弊など取るに足らないと考えているのだろう。
いまの日銀が導く日本の行く先は、トルコが辿った恐ろしい自国通貨安に向かっている恐れさえもあり、外貨建て資産は日本円に戻さず外貨のまま長期保有を検討していきたいと思う。
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