【米国雇用統計】2024年4月 米国労働市場の詳細確認

為替介入後に予想を下回る米国雇用統計が発表され、USDJPY相場を大きく円高方向に向かわせる結果となった。

予想を下回り、JOLTS求人数などの低下傾向などからして、米国労働市場の過熱感は冷め始めたととらえることができるだろう。
久しぶりに雇用統計が重要性を増し始めたところで、今の米国労働市場の状況を確認しておこうと思う。

非農業部門の雇用者数でいえば、+17.5万人となっていることから、絶対的な数値でいえば悲観するような数字ではない。

失業率と就業者比率

失業率は3.8%から3.9%へ上昇しており、傾向としてはの緩やかな上昇傾向が続いている。
過去に自然失業率と言われていた5%を大きく下回った状況が続いており、依然として労働市場が強いことには変わりがない。

また、就業者比率(E/P Ratio)で見ても高水準を維持しており、プライムエージの就業者比率は上昇しており、労働市場に弱さは見えない。

失業理由の詳細

失業理由に占める被解雇者の割合は上昇がみられ、中でもレイオフではなく永久解雇の割合がその上昇要因となっていることから、失業理由の内訳としては悪化している。

ポジティブな失業理由である労働市場への復帰や自主的な退職の割合は低下した。

就業者比率からしても労働市場への復帰者が増えることは大して期待できないことから、それは問題ないにしても、自主的な退職者の割合が減っていることは、より良い条件を求めた積極的な転職活動トレンドが落ち着いてきたと捉えることができ、賃金上昇率の低下傾向の継続を示唆する情報である。

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)

週給・時給とその他関連データ

週給及び時給の増加率の鈍化傾向も継続。

3月分までの実質賃金上昇率はプラスを維持してきたが、このペースで賃金上昇が継続すれば、実質賃金は減少に転じる恐れもあり、米国の消費を抑制し始めるかもしれない。

平均週間労働時間も低水準で横ばい推移となっており、逼迫感はみられない。

退職者変化も雇用統計の失業理由で確認した状況と整合的な動きをしており、こちらはコロナ前の水準を下回ってきた。

強気に転職するような状況でなくなってきているのか、高い賃金を求めて転職活動をする層の動きが一巡したためかは、わからないが、いずれにせよ以前のように転職すれば賃金の上昇が約束されているかのような労働市場ではなくなったということだろう。

以上みてきたことからして、労働市場の過熱感が冷めてきたことは確かだと思われる。
しかし、傾向はともかく、雇用者変化や失業率等の水準をみれば、悲観するような状況ではなく、今年前半の早期利下げを肯定するような状況にはないと思われる。

労働市場は強いかもしれないが、過熱感が冷めて賃金上昇率が下がってもなお、頑固な物価上昇が続けば、実質賃金の減少につながり、FRBは難しい政策調整を強いられることになるかもしれない。

それが消費停滞につながれば米株にとって一番望ましくない流れになるだろう。
米ドル円の再上昇は、円の信用不安が発見されるのがいつになるか次第であり、雇用統計側から大きな米ドル円の上昇につながるニュースは今後出てくる可能性は低いように思う。