海外資産・外貨建て資産への資金の流れは止まらない

日本の個人金融資産は2121兆円となり、4四半期連続で過去最高を更新している。

その個人金融資産に海外資産・外貨建て資産へと資金が流れやすい環境が出来上がりつつある。

それは主に国の実施する新NISAの影響と、金融機関が力を入れる外貨・外貨建て運用資産の取込み強化の流れによるものである。

こちらの日経新聞の記事によれば、新NISAの積立て予約は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコム証券のネット証券大手5社で20日までで月間2300億円”とのことである。
上記主要5社でNISA口座数の6割ほどを占めるとのことであるから、新NISA全体の積立て予約だけで4000億円弱となっているものと思われる。

これは積立て予約だけのものであり、実際にはより多くの資金が新NISAの利用に回されることになるだろう。

そして、積立てで人気の銘柄は全世界株式や米国株式のインデックスファンドとのことである。
このことから、少なくとも数兆円の資金が海外資産に流入することとなる。

当たり前だが、長期投資を考えるのであれば、低成長の少子高齢化が進み財政状況も悪い国内資産に投資すべきではないと考える人が多いこともうかがえよう。

この貯蓄から投資へと言う日本政府の掲げるスローガンのもとに進められる政策は、海外資産への投資を促し、円安基調を育て上げることになるであろう。

そして、国だけでなく、大手金融機関もこぞって外貨及び外貨建て資産の販売に力を入れている。

三井住友銀行が9月25日に米ドル定期預金金利を1年物で5.3%に引き上げたことで、ネット銀行を中心に巻き込んで外貨預金金利の引上げが競争が起きた。

ネームバリューで劣後するネット銀行やその他都銀はメガバンクよりも低い金利を出していては話にならないため、より高い金利を付けて顧客を獲得する必要に迫られている。

SBI新生銀行は米ドル1年物定期に6.0%の金利をつけるほどになっている。
auじぶん銀行も同じく6.0%まで引上げる動きがみられた。(現在は市場金利の低下に伴い引下げられている)

ソニー銀行も金利の引上げを実施し、11月末までは6ヵ月物米ドル定期に円からの預入時には9%の金利を付ける大盤振る舞いであった。
現在でもソニー銀行は、円と米ドルのセット定期で3ヵ月物の円25%:外貨75%の割合で投資をすれば、円定期に30.01%の金利を付与するキャンペーンを実施している。これは3ヵ月だけだが、年利10%超えで運用できることを意味しており、そこまでしてでも外貨を獲得したい・外貨預金シェアを獲得したいと考えているのだろう。

また、ネット証券でも外貨獲得の動きが出てきている。
SBI証券が米ドル円の為替手数料手数料を無料にしたことを皮切りに、楽天証券も同じく米ドル円の為替手数料を無料にした。
マナックス証券も次回見直しは2024年3月としながらも米ドル買付時の為替手数料を無料にしている。

大手行からネット銀行、ネット証券まで日本の金融機関はどこも外貨預金・外貨建て資産保有者の獲得に力をいれており、これだけ魅力的な条件が提示されていれば、それなりの資金が外貨建て資産に流れ込むことになろう。

以上の通り日本政府・国も、大手金融機関も外貨建て資産の保有を促すような政策・施策を実施しており、外貨資産の保有は今後増えていくものと思われる。

そして、日本の低金利・低成長の環境は変わらないであろうこと、「みんなやっている」ということに弱い国民性であることから、2000兆円を超える個人金融資産ははじめはスローペースで外貨建て資産へ流入していくことだろうが、「外貨建て資産保有が当たり前」という雰囲気が広がれば指数関数的に外貨建て資産への資金流入は加速するものと思われる。(指数関数的には言い過ぎにしても加速度的に)

この2000兆円超の個人金融資産は莫大であり、これの一部が流れるだけでも相当の円安圧力となる。
また、高齢者社会であることによる貯蓄減少・消費の超過によって貿易赤字を招きやすい体質となっていることも重なり、慢性的な円の弱体化トレンドの形成につながるのではないかと想定される。

それは更に海外資産への投資を強く正当化することになる。
長期投資で将来的に減価を続ける通貨建てで投資を続けること、低金利通貨で投資を続けることは悪手であるのだから。

この流れが予想されるとすれば、2024円から始まる新NISAで取るべき判断は、海外資産へ投資することであろう。もちろん海外の株式なのか、債券なのか、地域はどこかなどの違いはあるが、いずれにせよ日本国内の資産から距離を置くことが望ましいことに違いはないだろう。