シルバー民主主義の悪影響と惨めな日本経済

高齢化が進み、シルバー民主主義支配された無能な政府の放漫財政と、それを支えることを前提としてか愚策を続けることしかできない無能な中央銀行によって日本経済及び日本円の信用が崩れることは、たびたび述べてきたが、今回は再度高齢化社会において社保制度の改革を怠ったために陥った日本の醜態と、話題に上ることが多くなってきたデジタル赤字周りの国際収支に関してまとめておきたいと思う。

老人支援に費やされる貴重な労働力

現在の社会保険制度が現役世代を搾取し、消費停滞と労働意欲減退を招いているだけでなく、少子化で益々貴重になる労働力を無駄な医療・福祉活動のために浪費し続けている。

全体像から確認をしていくと、15歳以上の産業別就労者数は6700万人ほどとなっている。
女性の社会進出や高齢者の就業促進があり、全体の就業者数は増加してきたが、その流れも限界を迎えており、就業者数はピークアウトのタイミングに差し掛かっている。

製造業が1070万、卸売業・小売業が1020万人と最も多くの就業者数となっているが、それに続いて医療・福祉業界が915万人の就業者数を擁する。

医療・福祉業界の就業者数が全産業の就業者に占める割合は高齢化の進展とともに拡大し続けており、現在は13.6%となっている。
その他産業との労働力の奪い合いによって医療・福祉業界の就業者数の将来の増加ペースが鈍化する可能性はあるものの、他産業に見劣りしない賃金を国が設定すれば、需要の拡大に伴って、増加ペースが加速、より多くの貴重な労働力を吸い上げる恐れもある。

貴重な労働力が延命治療や過剰介護に使われることは、海外に売れるものの作り手と将来の競争力ある産業・企業の成長に寄与する労働者を奪い取ることを意味しており、更なる貿易収支の悪化や国際競争力のある産業の成長停滞の原因となる。

老人の延命治療・過剰介護の果てには何も残らない。
残すものがあるとすれば国の経済の衰退と等しく広がる貧しさくらいのものだろう。

国際収支からみる知識集約型産業から労働集約型産業への移行

慢性的な円安要因として取り上げられることが多くなってきたデジタル赤字の拡大、第一次所得収支黒字の拡大について順を追ってみていきたいと思う。

まず、経常収支全体としては、安定的な黒字状態が継続している。
しかし、その構成内容は大きく変わってきており、過去には貿易黒字の印象が強かった日本も今は貿易赤字が普通になってきており、対外資産からのリターンである第一次所得収支で経常収支を維持している状況が続いている。

旅行収支やデジタル関連収支が含まれるサービス収支に目を向ければ、サービス収支は慢性的な赤字状態が継続しており、コロナ禍以降には赤字幅の拡大が加速している。

サービス収支の内訳をみれば、コロナ禍で落ち込んだ旅行収支は急速に回復し、コロナ前を大きく上回る黒字を計上している。

それでもなおサービス収支を赤字化させている要因がデジタル赤字だと言えよう。
デジタル赤字はコンピュータ関連やコンサル、著作権等使用料をまとめたものと定義されることが多いが、デジタル赤字は5兆円を超えるほどまでに拡大している。

労働集約的な旅行・観光産業でお金を稼ぎ、海外のデジタル関連サービス・コンサルティングサービスなどの知識集約型産業サービスを使用するための支払いに充てているといった構造になる。

それでも、「経常収支は黒字であるのだから問題ないではないか、外貨は稼げるているはずだし通貨価値の維持にも寄与するはずだ」との主張もあろう。

しかし、既にみたように経常収支の黒字を構成するのは第一次所得収支であり、国内に還流しにくい性質があるものとして認識されている。

実際に内訳をみてみれば、第一次所得収支黒字のうち6割弱は直接投資収益からなり、その直接投資収益の約5割が再投資収益からなっており国外に残されていることがわかる。

直接投資収益に限らず証券投資収益に関しても国外で再投資されることが少なくないだろう。

以上の通り、高齢化が進行するにつれて慢性的な貿易赤字の継続、少子化に伴う労働力不足を補うために進められているデジタル・DX化が進むにつれて膨らんでいくであろうデジタル赤字・サービス収支赤字、そして日本国内に戻ってこない第一次所得収支といった構成からして、日本からの資金流出は今後も継続するものと考えられる。

そして、前述の通り労働力が何も生まない医療・福祉業界に吸収されることや、保守的で新しいものを嫌う高齢者に支配された硬直的な社会におけるイノベーションの阻害、社会保障制度維持のための財政悪化に伴う研究開発費の制限などを通じて、製造業及び知識集約型産業が他国に対して相対的に衰退していくことでこの構造変化は加速していくのではないだろうか。

予想される日本政府の不作為

以上の流れを止めるためには、医療・福祉業界の効率化・省人化と社会保障制度改革を通じた社会保障費の削減を通じて確保した人的リソース及び資金を成長産業に回すことであろうが、シルバー民主主義に支配された無能な政府がそれを実行することは期待しにくい。

また、社会保障制度改革と高齢者負担の増加に舵を切れないということは財政状況の悪化が継続することを意味することから、日銀はそれを支援するためには金利をあげるはできず、日本財政・日本円の信用は今後も毀損され続けることになるだろう。

一度大きな暴力的な破綻を受入れるより他ないのかもしれない。