【米国雇用統計】2024年5月 米国労働市場の詳細確認

ISM PMIから始まり、JOLTS、ADPと弱い数字が続いていたために雇用統計も弱いのではないか、利下げ期待の再燃を肯定する結果になるのではないかともみられていたが、発表された結果は見事にそれを裏切った。

失業率は予想の3.9%に対して4.0%と市場予想以上の悪化となったが、非農業部門雇用者数は+27.2万人と予想の+18.5万人を大きく超えたてきた。

ただ、フルタイムが増えているかと言えばそうでもないが、ヘッドライン上のインパクトとしては十分な結果であった。
軟調だった米ドル円も勢いよく切り返し一時157円台を回復、週末の終値では156.70付近となっている。

失業率と就業者比率

失業率は3.9%から4.0%へ上昇しており、傾向としてはの緩やかな上昇傾向が続いている。
過去に自然失業率と言われていた5%を大きく下回った状況が続いており、依然として労働市場が強いことには変わりがない。

また、就業者比率(E/P Ratio)では、プライムエージには低下がみられないが、全体のE/P Ratioは緩やかな低下基調となっている。労働市場に弱さがみられると言えるほどではない。

失業理由の詳細

ポジティブな失業理由である労働市場への復帰割合が増えていることは望ましいが、引き続き自主的な退職の割合は低下傾向にあり、積極的な転職活動トレンドは過去のものと言った状況である。
このことから、賃金上昇率が大幅に上がることはないように思われる。

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)

週給・時給とその他関連データ

平均時給の前月比増加率は+0.4%と市場予想の+0.3%を超えたが、週給及び時給の増加率の鈍化傾向を変えるほどのものではないだろう。

4月分までの実質賃金上昇率はプラスを維持しているが、僅かなプラスを何とか保っている状況が続いており、実質賃金は減少に転じ、米国の消費を抑制し始めることには引き続き注意が必要。

平均週間労働時間も低水準で横ばい推移となっており、逼迫感はみられない。(特段状況変化なし)

JOLTSの任意退職は若干増加も大きな流れの変化を示すことはなく、状況変わらずといったところ。

今回の雇用統計では大きな流れは変わらず、労働市場は緩やかに冷えてきている。
雇用者数の増加がパートタイムによるという指摘もあるが、それが賃金上昇率の低下とそれによる消費と物価の低下につながるかが重要である。
人手不足状況が続きパートタイムの賃金上昇率がこれ以上下がらなくなってくるということであれば、雇用者数の構成は物価抑制にそれほど寄与しない可能性さえあろう。

今回の雇用統計結果を考えれば、引き続き利下げは秋以降と思っておいてよさそうである。