【米国CPI・PCEPI】米国のインフレ継続性と利下げタイミング

米国の物価上昇率が大分低下してきて、6月頃には利下げになるのではないかとの見方が広がってきた。

久しぶりに米国の物価状況をまとめ、物価上昇の持続性と利下げタイミングとを考えてみたいと思う。

米国CPIの詳細確認

まず米国のCPIから見ていく。
ヘッドラインで前年比+3.1%、コアで前年比+3.9%と依然として高い数値が継続している。
直近数ヵ月間も緩やかに上昇率が低下してきているものの、コアCPIの上昇率低下は非常に遅く、コアCPIの前年比上昇率が2%付近まで落ちてくるまでには相応の時間がかかりそうである。

また、前月比でみても、コアCPIは非常に安定的な上昇がみられ、これだけを見ればインフレが落ち着いてきているとの見方を強く支持し辛い。

品目別にみれば、コモディティや食品価格等の上昇率低下が目立ってきたが、その下げも一服してくれば、サービス価格の上昇率の高止まりもあり、ヘッドラインやコアCPIの低下ペースが鈍化してくる恐れもあろう。

粘着的CPIと弾力的CPI

アトランタ地区連銀が、CPIの構成品目を価格の動きから粘着的/弾力的に分類して作成している粘着的CPIと弾力的CPIの動きをみてみる。

これを見ると、前年比でも3ヵ月前比年率でみても、弾力的CPIの低下は一服した一方で、粘着的CPIは上昇傾向に転じていることが伺える。

米国の強い経済状況を反映してか、基調的な物価上昇は非常に底堅いことを示唆している。
住宅価格の低下が遅れて家賃に波及し物価指数上昇率に反映されてくると考えられていたが、それも期待外れであったのかもしれない(少なくとも現時点では)。

PCEPIの詳細確認

PCEPI (PCE deflator)はヘッドラインで前年比+2.4%、コアで前年比+2.8%まで上昇率が低下してきた。
FRBが最も重視するコアPCEPIはまだ物価目標の2%には乖離があるものの、基調的な低下トレンドがみられることからも目標に近づいていることに違いはない。

項目別に見ればCPIと同じようにサービス価格の上昇率高止まりとコモディティ価格の上昇率低下が一服した後に現在のペースでPCEPIの上昇率が低下するのかが注視するポイントとなろう。

供給要因/需要要因の物価上昇寄与

次にサンフランシスコ地区連銀が出している供給要因と需要要因のPCEPI上昇への寄与を確認してみる。

PCEPIの需要要因に基づく上昇率の低下は一服しており、概ね横ばいの推移が継続している。
コアPCEPIの需要要因に基づく上昇は緩やかな低下が継続しているが、恐らくはヘッドラインのそれと同じような状況に数ヵ月中になることだろう。

供給要因に基づく上昇はPCEPIもコアPCEPIも横ばいとなっており、明確な低下基調はみられなくなっている。

以上みてきたところからいえるであろうことは、今までの物価上昇率低下はコモディティ価格(財価格)の低下によるものであり、それが一服した以上は低下ペースは鈍化することが予想できる。
それはサービス価格上昇率の高止まりや粘着的CPIの上昇からも言える。
供給要因・需要要因でみた場合にも物価上昇率低下ペースの鈍化が示唆される。

従って、最近進んできたFRBの利下げ期待が次第に後ずれして6月がコンセンサスとなってきたことは、間違った動きではないと思われる。
また、原油価格の上昇がみられるようにコモディティ価格の上昇が多少なりでもみられるようであれば、利下げ開始が7月、8月まで後ろ倒しされ、今年の利下げ回数も2回ほどといった可能性も考えられよう。