FOMCメンバー発言とテーパリング・スタンスまとめ

8月の大注目イベントであるジャクソンホール経済シンポジウムの前に、最近のFOMCメンバーの発言をまとめ、各メンバーのスタンスや今後のQEの進展、タイミング等の予想をしてみたいと思います。

また、前提条件としてメンバーの一覧と2021年のFOMCにおける投票権の確認もしてみたいと思います。

メンバー一覧と2021年の投票権まとめ

まず前提条件として、NY連銀総裁とFRB理事は毎年投票権を持っていますが、その他の地区連銀メンバーのFOMC投票権は持ち回りであり、毎年投票権があるわけではありません。

なので、FOMCメンバーの発言内容を確認する上では、誰が投票権を持っているのかをしっかり認識しておく必要があります。

下に役職、名前と投票権有無、それから最近の発言から考えられるテーパリングへのスタンスをまとめておきます。

2021年投票権テーパリング
スタンス
ChairJerome Powell非常に慎重
Vice ChairRandal Quarles
Vice ChairRichard Claridaやや前向き
BoardLael Brainard非常に慎重
BoardMichelle Bowman中立
BoardChristopher Waller前向き
New York FedJohn Williams
AtlantaRaphael Bostic前向き
ChicagoCharles Evans非常に慎重
RichmondThomas Barkin中立
San FranciscoMary Dalyやや前向き
BostonEric Rosengren前向き
ClevelandLoretta Mester
DallasRobert Kaplan前向き
Kansan CityEsther George
MinneapolisNeel Kashkari非常に慎重
PhiladelphiaPatrick Harker
St. LouisJames Bullard前向き

テーパリング・スタンスは下記にまとめる発言内容から個人的に考えたものです。

各メンバーの発言内容

メンバー一覧投票権金融政策に関する発言・スタンス
Jerome Powell債券購入の縮小に関して、MBSと国債の購入額縮小は同時に行われると考えていることを示した。(2021/7 FOMC質疑応答)
彼の今までのスタンスからして、同時に年内にという強気な考えではないだろうから、2022年になってからのQE縮小を想定しての発言と思われる。
Randal Quarles
Richard Clarida年内のQE縮小と2023年の利上げを予想していると発言(2021/8/4)
Lael Brainard過去の発言から、雇用の回復が足りず、物価上昇もフェードすると考えを示してきた。2021年8月にはいってからも雇用の回復が足りないとの考えを変わらず発言している。
Michelle Bowman物価上昇が想定よりも長く続く可能性には言及しているものの、2021/8月時点の発言では、労働市場にはもう一段の回復が必要だとの考えを示した。
Christopher Waller2022年内の利上げの可能性、債券購入の縮小に関してはMBSから始めることが望ましいとの発言がある。QEに関しては2021年内又は2022年前半の縮小を主張。
John Williams
Raphael Bostic2021年後半の債券購入額縮小と2022年の利上げが必要だと発言。
Charles Evans高いインフレ率を問題と考えていない発言が多かった。利上げに関しても2024年になってからの予想をもっており、慎重姿勢。一方で2021年8月の発言では、失業率が2021年待つまでに4.5%に達すると予想を示し、それまでにはQEにいくらかの調整が必要になるとの考えを伝えた。又、利上げ時期についても当初予定よりも早くなったとしても経済の堅調さを反映したものであれば問題ないとも発言。
Thomas Barkin2021年8月には、FEDがテーパリングに近づいていることは認めるも、労働市場がテーパリングに十分なまでに回復するのには数か月(a few months)かかるだろうと考えを述べた。
Mary Daly以前は慎重姿勢を示すような発言が多かったが、2021年8月に入ってからの発言では、2021年内又は2022年前半でのテーパリングを予想していると発言がある。
Eric Rosengren2021年8月の発言では、Fedは秋までに金融緩和政策の縮小をすべきだと主張した。彼の主張ではMBSと国債の購入を両方とも今秋に縮小すべきとの考え。
Loretta Mester
Robert Kaplan2022年内の利上げが適切になる可能性を示唆。
QEに関しては、2021年10月にも縮小すべきだと発言しており、早期テーパリングに前向きな考えをしめしている。
Esther George2021年8月の発言では、現在のインフレ率と労働市場の改善からすれば、債券購入プログラムを縮小する条件はすでに満たされているとの考えを示した。
Neel Kashkari完全雇用のため2023年末までは政策気金利を現行水準で維持すべき(つまりは利上げはない)と考えている。2021年8月にはCOVID-19のデルタ株が労働市場に悪影響を与えるだろうと不安視しており、非常にハト派的なスタンスを維持。
Patrick Harker
James Bullard2022年後半の利上げ可能性について言及している。
債券購入プログラムの縮小については、2021年秋には開始し2022年3月末までに完了させるべきだと発言。

一部メンバーについては、最近のテーパリング・ペースに関する発言がひろえなかったため、空欄になっている。

投票権を持っており、且つテーパリングに対して慎重な姿勢を示しているのは、Powell、Brainard、Quarles、Williams、Evansと思われる。その中、2021年8月に入ってからも慎重姿勢を示しており、スタンスが変わらないのがBrainardとEvansである。この二名に関しては、非常に慎重な、ハト派的な考えが強い。

一方で8月に入ってからテーパリングに関する具体的な発言のないWilliamsとQuarlesの考えが気になる。
この二名のうち片方でもテーパリングに傾けば、全体感からPowellも比較的早いテーパリングに傾き、2021年後半の
QE縮小、2022年後半の利上げといった流れになるものと考えられる。

このことからして、今後重要になるのはNY連銀総裁のWilliamsと副議長のQuarlesの発言・スタンスであると考えられ、注視していく必要があろう。

また、Powellが議長としての任期が近くなっていることから、秋には続投か否かの判断がされるであろうし、Claridaの任期が来年に来ることなど、Fed人事も目が離せない。