【米国雇用統計】2022年8月の米国労働市場の詳細確認

今回の米国雇用統計は、雇用者数が市場予想を上回り31.5万人(予想30.0万人)となった一方で、失業率は予想よりも悪化して3.7%(予想3.5%)とまちまちの結果となった。

依然として非常に強い労働市場を示唆する内容とはなっているが、いくつか気になる点も出てきており、その点について確認していきたいと思う。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業率と就業者比率

失業率は予想に反して悪化し3.7%となってものの、就業者比率(就業者数/生産年齢人口)では改善がみられるため、失業率の悪化は労働参加率の上昇によるものであり、今回の失業率悪化は悪いものではないと考えられる。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の詳細

一方で失業理由の内容をみてみると、一時的なものかもしれないが、被解雇者の割合(及びそのうち一時解雇者でないものの割合)の増加がみられた。

すぐに問題になるものでもないとは思うが、今後はインフレや金融引締めによって打撃を受ける企業と解雇者が増加する兆候がみられないか注意する必要がありそうである。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)
  • 新規参加者(New Entrants) : 新たに職探しを始めた人

週給・時給とその他関連データ

週給および時給の前年比伸び率は前回と同水準となり、高水準を維持している。
人手不足を背景に賃金上昇が続いている状況に変わりはなさそうである。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

しかし、実質賃金の伸び率(7月時点)のものはマイナス圏が続いており、高水準のインフレが消費の大きな妨げにならないか引き続き懸念される。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

基本的には人手不足とのことで賃金上昇が続ていいるが、平均週間労働時間については減少傾向がみられる。働き方の変化の問題だとすれば、人手不足の状況を悪化させる要因となるだろう。

仮に働き方の変化ではないとすれば、雇用が今後より困難になると考えた雇用者が先を見越して雇えるだけ雇った結果として平均的な労働時間に減少がみられたという可能性もあるだろうか?

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

今回の雇用統計の影響と投資戦略

今回の雇用統計を受けてFRBが金融引締ペースに何らかの変更を加えるとうことはまったくもってないだろう。

彼らの最優先事項はインフレ率を2%に近づけることであり、いまは雇用統計が悪化しようとも物価上昇が抑制されない限りには、金融引締に変化を加えることはないと思われる。

従って、引き続き短期債を中心に利回りが上昇していくだろう。米国10年債利回りが再び3.5%を超えるようなことがあれば、長期米国債ETF、長期投資適格社債ETFへの投資が考えられるタイミングと思っている。

米国株式については金利上昇局面のため引続きバリュエーションが魅力的な水準になるまでは待ち。

為替については、USDJPYは米国というよりも頑なな日銀が仕事をするかどうかによるだろう。