植田総裁発言からうかがう日銀と日本円の信認失墜

いつも訳の分からない理由を挙げて失策を続けている植田総裁ですが、財務金融委員会でもおかしな発言を連発、更には将来の日本円の信認失墜を思わせるような発言がみられました。

階委員から、物価をどうしたいのかについて「第二の力が弱いから金融政策を維持しているというお話でしたけれども、今現在、仮にエネルギーの補助がなかりせば、物価は四%上昇なわけですよ。こうした現状に鑑みて、日銀としては、これから物価を上げたいのか下げたいのか、どっちなのかはっきり言ってください。」との質問。

これに対して、植田総裁は、
植田参考人「エネルギー補助金がなかりせば四%前後である全体のインフレ率、これは下がっていくことが望ましいと考えております。しかし、中長期的な観点からは、先ほど申し上げたような第二の力によるインフレ率が少しずつ上がっていくことが望ましいというふうに考えており、その上で、第一の力によるインフレは、輸入物価も減少に転じていますし、ということから、早晩勢いが衰えてくるというふうに判断しております。その下で、第二の力の方を育てていくために金融緩和を維持しているということでございます」

ダラダラ言い訳をして、まったく答えるつもりがないわけである。
物価を上げたいのか下げたいのかについての回答にはなっていない。何もわからずに緩和を継続することだけを考えていることが伺えよう。

階委員はYCCの修正についても次のように素晴らしい批判を加えてくれている。
「これもさっきの還元と同じく、一般人には理解し難い話なんですよね。ゼロ%で推移するという範囲に一%超えも含むというのは、どう考えてもおかしいでしょう。そういう言い方をするから、日銀が信用されなくなるわけですよ。幾らマーケットに働きかけて円安を是正したいと思ったとしても、それは功を奏さないわけですよ。そういうことをもう少し真摯に受け止めたらどうでしょうか。
私は、もう潔く、イールドカーブコントロール、目標としては実質賃金が上がる形で二%達成だけれども、道半ばだけれども、円安、物価高が進んでいるから、これはもう長期金利のコントロールはやめます、それでいいんじゃないですか。そういうふうに正直に言うべきだと思いますよ。その方が物価という意味ではプラスに働いたと思うんですが。
こういう分かりにくい、矛盾をはらんだ支離滅裂なメッセージの発信は、非常に私はマーケットを混乱させるし、また、日銀が意図した方向と反して物価高を進めているんじゃないかと思いますが、どうでしょうか」

この指摘の通り、日銀は支離滅裂なメッセージの発信ばかりであり、論理的な根拠に基づく金融政策を遂行する能力が著しく欠如している。
それにもかからず日銀は、論理破綻した言い分を恥ずかしげもなく展開し、失策を続け経済状態を悪化させ、一般消費者の貧困化を加速させることしかできない圧倒的に無能な中央銀行である。この点には政治家も一般国民も気づき始めているだろう。

続いて掘井委員から中央銀行の財務状態と通貨の信認についての質問に対しては、

植田参考人「私ども、管理通貨制度の下で、通貨に対する信認は、中央銀行の財務の状態ではなくて、金融政策を適切に行い物価の安定を図る、あるいは、そういうことを中央銀行が目指しているということが理解されているということが重要というふうに考えてございます」

通貨の信認は中央銀行の財務状態に左右されるものではなく、適切な金融政策によって物価の安定を図っていること、それを姿勢を理解されていることが重要と言うが、それならどちらにしろダメじゃないかと。

そもそも今の失策をもってあたかも物価の安定に資する適切な金融政策をやっているかのような発言だが、まったくそんなことはないし、そう認識しているとすれば(そう認識しているんだろうが…)、引き続き誤った認識に従って失策を継続しているということになるでしょう。

こんな発言を恥ずかしげもなく披露する方が日本の中央銀行の総裁をやっている時点で、中央銀行の金融政策に信認などあるはずもなく、その発行する通貨の信認が失われないわけがないと思わずにはいられない。

さて、続きをみてみますと、

「その上で、先ほど申し上げましたように、中央銀行は、長い目で見れば、通常、収益を確保できる仕組みになっている。あるいは、自分のオペレーションをするために、自分で支払い決済手段を提供することもできます。したがって、一時的に赤字あるいは債務超過になっても、政策運営能力に直ちに支障が生じるというわけではございません。
ただ、財務の状態が幾ら悪くなっても全く問題がないかということでは恐らくなくて、それ自体、財務の状態、財務リスク、あるいは財務が悪化しているということが妙に注目されまして金融政策をめぐる無用の混乱が生じるという可能性もありますので、財務の健全性には注意していきたいというふうに考えてございます」

財務状態の悪化が注目されたら結局ダメなようです…..
そうだとすれば”財務リスクに気が付かれなければ大丈夫です”という当たり前のことを言ってるだけにすぎないわけであって、そして、今の政策上でどうやって財務の健全性に注意するというのか。
彼らは物価指標も都合よく解釈することしかできないのに、財務リスクなんか直視できるわけがないのだろうな。

続いて、金融緩和と賃金上昇を結べつけるメカニズムについての説明では、

植田参考人「一般論になって恐縮でございますが、やはり、金融緩和は、実質金利を低位に保つということを通じて、財・サービスに対する総需要を刺激したり、それに伴って雇用が拡大する、労働需給の引き締まりをもたらすということで、結果的には賃金の押し上げに寄与する可能性があると考えております」

まず金融緩和によるものではなく、労働需給は逼迫しているわけであり、失業率が3%以下であるような水準にあって金融緩和で更に逼迫させようというのは明らかな誤りではなかろうか。

こんな状態がずっと続いているわけであって、金融緩和が思うように賃金を上昇させることはできてこなかった、何なら実質賃金を下げる効果しか出ていないというのが足元の状況だといえる。

次に金融緩和が円安と実質賃金低下を招いているのではないかとの質問に対して、

植田参考人「私どもの金融緩和がどれくらい円安に効いてきたかということは、なかなか議論のあるところだと思います。
ただ、仮に、金融緩和ではなくて強い金融引締めを行ったとしますと、円安ではなかったかもしれませんが、金融引締め自体が経済に悪影響を及ぼし、人手に対する需要にも悪影響を及ぼし、どれくらい時間的なラグがかかるかというのはありますけれども、雇用、賃金にも大きな悪影響を及ぼすということになったであろうというふうに考えます。」

YCCやマイナス金利をやめたくらいで現在の人手不足が解消されるほどに労働需要が減少していたと本気で思っているのだろうか。

人口動態に基づく労働人口の減少、コロナ禍開けの観光業や飲食業の労働需要の急回復などを全て相殺するとはとても思えない。

どころか過度な円安と物価上昇を抑え、実質賃金や実質消費支出の減少を抑えることができていたのではなかろうか。

質問をした前原委員が指摘している通り、極端な回答と言わざるを得ないでしょう。

以上の通り、物価認識、まともに理由付けもできない愚策の継続と日銀の無能さを上げれば枚挙にいとまがない。

不適切な認識に基づく不適切な政策を遂行する日銀及び日本通貨の信認が失墜するのも時間の問題だろう。

植田総裁自身が唯一まともに認識している”失策が通貨の信認を失墜させる”という事実と整合的な結果をみることになると予想する。

紹介した支離滅裂な回答以外にも多くの理論破綻した回答がみられたので、ぜひこちらで財務金融委員会の内容について確認してみて欲しい。