2022年3月 米国の金利及び物価状況まとめ
- 2022.03.18
- 経済・マーケット
最近経済指標発表後のまとめをさぼっていましたが、先日のFOMCにて2018年以来の利上げもあったことから、久しぶりに米国の金利と物価状況をまとめておきたいと思う。
また、利上げ後の金利状況や今後の見通しにあわせて通貨取引戦略についても簡単に考えてみたいと思う。
米国国債利回り状況
2022年3月の利上げを受けて短期金利が上昇。
長期金利に関しても堅調な推移となっており、既にコロナ前の水準を超えてきている。
一方で実質金利に関して2月の水準さえ超えておらず、今後の利上げと物価上昇圧力が落ち着いてくることで0%を上回ってくるとは思われる。
Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System
長短金利差の縮小は以前から予想していた通りの状況となっている。
直近の利上げや物価上昇圧力とウクライナ問題に絡む不安感などを背景に10年債と2年債のスプレッドは0.25%付近で推移するまでになっている。
今後も非常に強い物価上昇圧力への対処として比較的早い利上げがあることを考えれば、長短金利差縮小トレンドは継続するものと思われる。
景気後退の先行指標とされる長短金利差の逆イールドが近づいてきた際には市場心理の悪化とその後の景気後退に注意が必要になるだろうが、逆イールドになるのは早くても年末くらいではないだろうか。
Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System
この状況を考えると、債券ETFの投資戦略についても以前から想定していた通り、年後半に長期債ETFへの投資機会が訪れそうである。短期債ETFは引き続き触らない方針でよいだろう。
インフレ状況と今後のインフレ見通し
インフレ状況
直近のCPI、PPI、PCEデフレーターをみると、コアPPIを除いては物価上昇の加速を示唆しており、すぐに落ち着く兆しはない。
コアPPIだけは前月比での伸びがいくらか落ち着いているが、今後それが継続するのかは怪しい。
原油をはじめとしたエネルギー、資源価格も非常に高い水準にあり、ウクライナ・ロシア戦争や中国でのコロナウイルス感染者増加といった物価上昇につながる要因も残っている。
(中国のコロナ感染は物流や生産に影響を与えるとすれば)
Data Source = U.S. Bureau of Labor Statistics
Data Source = U.S. Bureau of Labor Statistics
Data Source : U.S. Bureau of Economic Analysis
インフレ見通し
インフレ見通しとしてBEI(ブレークイーブンインフレ率)をみてみる。
5年、10年のBEIは急激に上昇しており、債券市場としては非常に強い物価上昇が続くことを示唆している。
FRBや中銀関係者が市場のインフレ見通しが2%を超える程度であることに安心をしていたようなときもあったが、状況は大きく変わっており、現在のインフレ率からも予想インフレ率からもすばやい対処が必要であることは明らかである。
急激な物価上昇の悪影響は引き続き消費者信頼感の低下などにあらわれている。
Data Source : Board of Governors of the Federal Reserve System
為替やリスクアセットへの影響と投資戦略
通貨取引戦略
2022年1月の記事で予想していた通り、USD高が大きく進み、米ドル買いが非常に良い結果となっている。米国の政策金利の引き上げが続こうことから、USDが堅調な推移を続けるとは予想できる。
しかし、これも以前の予想から変わりないが、早い利上げと強い物価上昇、長短金利差の縮小といった要因がリスクアセットの上昇を妨げる可能性は十分にあることから、USDJPYに関してはショートする機会を伺っていくべきだと思っている。
最もウクライナ・ロシア戦争に伴うエネルギー・資源価格急騰のおかげで日米金利差拡大に加えて日本の経常収支悪化という円安要因が加わってきたことから、タイミングは慎重に選ぶ必要があろう。
とはいってもUSDJPYは急激に上昇しており119円付近であることから、今の水準から少額ずつショートポジションを持って行ったとしても将来的には十分プラスになるとは思う。
又、日銀は頑固に金融緩和継続を主張しているものの、携帯料金低下の影響が剥落してくる3月以降には2%のインフレ目標に到達してくるものと思われ(コストプッシュインフレではあるが)、現在の効果の上がらず株式市場をゆがめるだけの緩和政策からの転換を迫られるタイミングがあるのではないかと期待している。
AUDUSD売りの機会も引き続き探っていきたいとは思っているが、資源高が落ち着くまでは見送りが続きそう。
その他ETF等
債券ETFに関しては上述の通り年後半に長期債ETFへの投資機会を考えていきたいと思っている。
政策金利上昇が続くことから短期債ETFに資金を振り向ける機会は年内は難しいかもしれない。
株式関連については、目先で若干の調整があったものの、日本株関連は日本経済がスタグフレーションまっしぐらであること、米株に関しても割安感はほぼないことから、積極的な投資はせずに、キャッシュポジション厚めのポートフォリオを維持しておくべきと考えている。
株は大きく下げるタイミングが来ることを祈りたい。
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