【米国雇用統計】2022年5月の米国労働市場の詳細確認

5月の米国雇用統計は、非農業部門の雇用者変化が予想の32.6万人を上回り39.0万人となった。

一方で失業率は予想の3.5%に対して前回同様の3.6%止まりであった。

失業率はすでに十分低いことから、予想に比べて弱かったことは大きな問題ではなく、雇用者変化が予想を大きく超えたことのほうがより重要であり、今回の雇用統計も米国労働市場の強さを示す形となった。市場でもこの雇用統計を受けて金利の上昇等の動きがみられた。

しかし、雇用者数は徐々に伸びが鈍化しているため、今後は経済悪化の兆候が見つからないか注視していく必要があろう。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業率と就業者比率

失業率は下がらなかったが、就業者比率については労働人口全体とプライムエージとで僅かながらの改善が見られた。

プライムエイジの就業者比率はコロナ前のそれとほぼ同水準まで改善していることから、これ以上の急速な上昇は難しいだろう。

また、労働者人口全体での就業者比率についても高齢化やコロナショックをきっかけとするシニア層の労働市場からの退場を考えられば、こちらもコロナ前の水準に戻すのは相当の時間がかかることだろう。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の詳細

失業のうちの被解雇者の割合は前回からさらに改善が続いている。
被解雇者の割合や、一時解雇の割合などいずれもコロナ前の通常の水準に戻ってきている。

労働市場への復帰者の割合も堅調であり、全体として非常に良い状況と考えられる。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

失業理由の分類は下記を参照。

  • 被解雇者(Job Losers) : 会社都合の一時解雇、解雇
  • 退職(Job Leavers) : 自己都合の退職者
  • 契約期間満了(Completed Temporary Job) : 一時的な/臨時の仕事を終えた場合
  • 労働市場への復帰者(Reentrants) : 再度職探しを始めた人(not-in-labor-forceからの復帰)
  • 新規参加者(New Entrants) : 新たに職探しを始めた人

週給・時給とその他関連データ

週給および時給の前年比伸び率は前回に比べれば鈍化したが、高水準を維持していることには変わりなく、人手不足を背景に賃金上昇が続いていることがわかる。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics

しかし、実質賃金の伸び率(4月時点)のものはマイナス圏が続いており、高水準のインフレが消費の大きな妨げにならないか引き続き懸念される。

Data Source : U.S. Bureau of Labor Statistics