【FOMC】予想通りテーパリング・アナウンスなしだが、年内テーパリング開始はほぼ確実に

今回のFOMCでは、直近の雇用統計が弱かったことから予想していたように、テーパリングのアナウンスはなく、11月のFOMCまでお預けとなった。

しかし、パウエル議長の発言内容からするに、年内のテーパリング開始はほぼ確定したといえる。

このことから、11月のFOMCでテーパリングのアナウンスがあるとして、その金額やペースがどのようなものなのかやその後の政策金利引き上げタイミングに注目がシフトする形となるだろう。

今回は9月のFOMCのため、各メンバーの政策金利見通しを示したドット・プロットも発表されているため、内容を確認したいと思う。

2021年9月 FOMCのドット・プロット内容

今回発表されたFOMCメンバーが将来の政策金利予想を示した”ドット・プロット”によれば、前回発表された6月に比べて2022年中に利上げを予想するメンバーが増え、9人のメンバーが少なくとも1回の利上げが適切と予想していることを示した。

2024年まで利上げしないとの考えのメンバーは、5人から1人まで減った。

このことから、以前から物価上昇率や雇用統計等の経済指標の動きから2022年中の利上げを予想してきたが、FOMCメンバーの中でも同じように考える方が増えてきたようであり、ますます可能性が高まったといえる。

2021年9月 ドット・プロット

Midpoint of target range (%)2021202220232024Longer run
3.125     
3.000    2
2.875     
2.750     
2.625   1 
2.500    9
2.375   11
2.250    4
2.125   6 
2.000    1
1.875   1 
1.750     
1.625  32 
1.500     
1.375     
1.250     
1.125  63 
1.000     
0.875  13 
0.750     
0.625 331 
0.500     
0.375 64  
0.250     
0.1251891  
Source : Federal Reserve Board

2021年6月時点のドット・プロットがこちらです。

Midpoint of target range (%)202120222023Longer run
3.125    
3.000   2
2.875    
2.750   1
2.625    
2.500   8
2.375   1
2.250   4
2.125    
2.000   1
1.875    
1.750    
1.625  2 
1.500    
1.375    
1.250    
1.125  3 
1.000    
0.875  3 
0.750    
0.625 23 
0.500    
0.375 52 
0.250    
0.12518115 
Source : Federal Reserve Board

パウエル議長の注目すべき発言内容

テーパリングのペースについて

We also discussed the appropriate pace of tapering asset purchases once economic conditions satisfy the criterion laid out in the Committee’s guidance. While no decisions were made, participants generally view that, so long as the recovery remains on track, a gradual tapering process that concludes around the middle of next year is likely to be appropriate.

Transcript of Chair Powell’s Press Conference September 22, 2021

“私たちは経済状況が基準を満たした場合の適切なテーパリングのペースについて話し合ってきました。
結論には至っていないが、参加者は一般的に現在の回復基調が継続する限りは、テーパリング・プロセスが来年の半ば前後までに完了することが適切になるであろうとみている。”

“更なる著しい進展(substantial further progress)”について

テーパリングを開始する条件として何度も言及されてきた”更なる著しい進展(substantial further progress)”については、以下のような発言が見られた。

So the test for beginning our taper’s that we’ve achieved substantial further progress toward our goals of inflation and maximum employment. And for inflation we appear to have achieved more than significant progress, substantial further progress. So that part of the test is achieved, in my view and in the view of many others. So the question is
really on the maximum employment test. So if you look at a good number of indicators, you will see that, since last December when we articulated the test and the readings today, in many cases more than half of the distance, for example, between the unemployment rate in December of 2020 and typical estimates of the natural rate, 50 or 60 percent of that road has been traveled. So that could be substantial further progress. Many on the Committee feel that the substantial further progress test for employment has been met. Others feel that it’s close, but they want to see
a little more progress. There’s a range of perspectives. I guess my own view would be that the test, the substantial further progress test for employment is all but met.

Transcript of Chair Powell’s Press Conference September 22, 2021

“テーパリングを開始について、物価目標と雇用の最大化についての更なる著しい進展の達成を条件としてきた。そして、物価上昇はすでにその進展を達成したと思われる。そのため、残りの雇用の最大化について更なる著しい進展が確認できたかが問題となる。この条件を示した昨年12月以降の複数の望ましい統計結果を踏まえれば(昨年12月の失業率と自然失業率の差が50%から60%ほど縮まったように)、達成すべき条件の半分以上は満たされたようにみえるだろう。これが更なる著しい進展と考えることもできる。実際のところ多くのFOMCメンバーが雇用の目標についても更なる著しい進展は達成されたと感じている。他のメンバーも進展はほとんど条件を満たしたと考えているし、私(パウエル議長)もほとんど雇用の進展も条件を満たした推測している。”

次回(9月)の雇用統計のテーパリング・タイミングへの影響について

テーパリングを開始するにあたり9月分の雇用統計がどの程度影響をあたえるのか。具体的な雇用統計の改善が目安があるのか、累積的な改善がみられらばいいのかといった質問がった。

それに対してのパウエル議長の回答の内容は以下のようなものだった。
(重要と思われた部分のみ引用)

“it’s accumulated progress. So, you know, for me, it wouldn’t take a knockout, great, super strong employment report.”
“in my own thinking, the test is all but met. So I don’t personally need to see a very strong employment report, but I’d like it see a decent employment report.”

Transcript of Chair Powell’s Press Conference September 22, 2021

“それは累積的なプロセスである。そのため、非常に強い雇用統計結果が必要とは考えていない。”
“私の考えでは、条件はほとんど満たされており、非常に強い雇用統計結果が必須とはないと考えていないが、そこそこの結果ではあって欲しいと思っている。”

FOMC内容から読み取る今後の展開

上で見てきた今回のパウエル議長の発言内容からして、FOMCメンバーはテーパリングの条件は満たされたと考えるようになっており、他のメンバーも少なくともほどなくテーパリングが実施が適切になると考えていることがわかる。

又、テーパリング開始条件と思われる労働市場の改善についても、ほとんど十分な改善がみられたと考えられているようであり、次回雇用統計結果が非常に悪いものでない限りは、11月にテーパリング・アナウンス、12月からのテーパリン実施はほぼ決まったようなものだろう。
(そういう意味では次回雇用統計はそこまで注目材料ではないのかもしれない)

政策金利の引き上げについては、2022年中の利上げを予想するメンバーが半分を占めるまでになっており、今まで市場が想定してきたよりは早い段階での利上げ可能性が高まった。

パウエル議長の発言内容を踏まえて、今後の流れをまとめれば、11月にテーパリング・アナウンス、12月テーパリング開始、2022年半ばにテーパリング・プロセス完了、2022年後半に利上げ1回程度といった流れになるものと思われる。

このように今まで市場がとらえていたよりは早い利上げが予想でき、先進国通貨のなかでUSD買いが魅力的な選択肢であると個人的には考えています。

新興国通貨については、COVID19ワクチンの供給が先進国に比べて遅いこと、米国の利上げ時はUSDに資金が流れやすいことから、今後はつらい状況が続くと思われる。